「つながらない権利」とは何か — これからの労働基準法改正のポイント
厚生労働省では、令和の働き方の多様化や長時間労働・過重労働の課題に対応するため、労働基準法の抜本的な見直しに向けた検討を進めています。
この検討は政府の「労働基準関係法制研究会」で行われており、多様な働き方を前提とした新たな制度設計が検討されています。
その中で注目されている論点のひとつが、「つながらない権利」という概念です。
「つながらない権利」とは、勤務時間外に業務と切り離され、使用者からの指示や連絡に応じない権利を指します。
これは単なる“残業しない権利”とは異なり、従業員が勤務時間外に電話やメール、チャットなどで業務上の連絡を受けない環境を保障する権利です。
欧州の一部では既に法制化されているこの権利は、日本の働き方改革の一環として取り上げられています。
従来の労働基準法は、労働時間・休憩・休日などを労働条件として最低基準で定めていますが、勤務時間と勤務時間外の境界を明確にする規定が十分ではありませんでした。
特にスマートフォンや在宅勤務が普及した現代では、物理的な退勤後も業務への「つながり」が続きやすく、心身の休養が阻害されることが問題視されています。
このため、厚生労働省の研究会では、勤務間インターバル制度(一定時間の休息を義務化する制度)や、連続勤務日数の制限と同じく、「つながらない権利」を労働基準法の枠組みとして位置付ける方向で検討が進んでいます。
具体的には、企業が就業規則等において勤務時間外の連絡・指示を制限するルールを定めることが求められる可能性があります。
現時点では、これが労働基準法のどの条文として明文化されるか、あるいは義務規定としてどの程度の強制力を持つかは確定していません。
また、厚生労働省は「ガイドライン」の策定も含めて検討しており、企業が自主的に運用できる指針を整備する方向性も示されています。
企業が従業員の健康管理やワークライフバランスの向上を図るうえで、この権利をどのように実務に落とし込むかが今後の重要な課題となります。
企業にとって「つながらない権利」の導入は、従業員の休息確保やメンタルヘルス対策としての意義が大きい一方、実務上は労働時間管理の在り方、連絡手段の運用、評価制度や就業規則の整備など、多角的な対応が必要になります。
法改正が今後具体化する中で、各企業は最新の動向を注視しつつ、従業員に安心して働ける環境づくりを進めることが求められます。
厚生労働省:テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン





