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一般社団法人日本人材育成協会

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労務管理の知恵袋

労務管理の知恵袋

労務管理に欠かすことの出来ない「労働関係法規」を学ぶことにより、その知識は実際の職場で役立つ「知恵」に還元されます。より多くの「知恵」を身に付けることにより、労務管理を通じて、より良い職場環境づくりが実現可能となります。
ここでは労使間の連携を図り創意工夫しているいくつかのケースをご紹介致しますので参考にしてください。

休憩時間を短くして、早く帰ることが出来ます。

例えば、8時始業で5時終業の事業所で昼休みが1時間と言う事業所が多く見られますが、労働基準法第34条では、労働時間が6時間以下の場合は休憩を与えなくてもよく、6時間を超える場合は少なくとも45分以上の休憩が必要とされています。従って前述のケースでは、就業規則で1時間の昼休みを45分に変更して終業時間を15分早める事が可能です。(※就業規則の変更は、事業所の労働者の過半数で組織される労働組合か、そのような組合がない場合は労働者の過半数を代表する者の意見書を添付し労働基準監督署長へ届け出が必要)
 
例えば、子供がいる家庭で、幼稚園や保育所に子供を迎えに行かなければならないような労働者には、少しでも早く子供を迎えにいけるという利点がありますし、一般の労働者にとっても朝の出勤時間を15分遅らせる事で、朝ゆっくり出勤することや15分早く帰社する事で通勤のラッッシュアワーを回避することも可能です。
 
使用者側にとっても、15分早く帰社させる。又は、遅く出勤させる事により、子供が出来たという理由で退職を考えなければならない有能な労働者の人材流失を防ぐことも出来ますし、労働時間の意識付けを行う事により作業能率を向上させ、無駄な残業を抑制出来るというメリットがあります。
休憩時間は長いほうが良いと言う従来の考え方を見直し、労務管理の知識「知恵」を上手く活かしてください。

年休の計画的付与制度を導入し年休取得を促進する。

年休の計画的付与制度とは、事業場の労使協定に基づいて、年次有給休暇の計画的な取得又は付与を可能にする制度です。
年次有給休暇は、労働者に与えられた権利として取りたい時に自由に取れる労働者の権利です。ところが、実際には職場に対する気兼ねや職場の忙しさ、又は人手不足等の理由で、年次有給休暇の取得率が上がらないという状況が現実にあります。
 
そこで、労働者に与えられる年次有給休暇のうち、5日までは労働者が自由に取れるようにして、それを超える部分について事業場の労使協定に基づいて、半ば強制的に年次有給休暇を取得させ年休の計画的な付与を可能にし、年次有給休暇の取得率、又は消化率を高めようという制度が年休の計画的付与あるいは年休の計画的取得といわれるものです。年休の計画的付与制度は1987年の労働基準法改正で設けられた制度であり、付与の対象も事業場全体で一斉に年次有給休暇を付与する方法や班別に交代で付与する方法。又は計画表を用いて個人ごとに付与する方法があります。但し年次有給休暇をあらかじめ定めることが適当でない者については、労使協定により対象から除外するなどの配慮が望ましいとされています。又、退職者については退職後に年休付与が計画されていても取得は不可能ですので、その年次有給休暇は、個人の時季指定に従って取得出来る事になります。
 
例えば、5月のゴールデンウィークが飛び石連休になる様な場合、飛んでいる平日に年次有給休暇を計画付与することによって長期休暇を実現したり、夏期休暇や冬期休暇等に割り当てて年次有給休暇を消化させたりすることが出来ます。
 
労働者には、すべての年次有給休暇日数を自由利用することが出来ないというデメリットがありますが、年次有給休暇の消化率が上がらないという現実を考えた場合、実態に即して年次有給休暇の取得率あるいは消化率を高める為の制度ですので、この制度を労務管理の手法「知恵」として上手く活かしてください。

1ヶ月単位の変形労働時間制によって賃金コストを抑制する。

変形労働時間制を導入する事によって、一定の期間を通じ平均して「1週40時間(44時間の特例もあります)」の原則を守れば、期間内の特定の日や特定の週に、「1日8時間、1週40時間」を超えて労働させる事が出来る様になり、合理的な労働時間管理に役立ちます。

変形労働時間制には、
①1ヶ月単位の変形労働時間制
②フレックスタイム制
③1年単位の変形労働時間制
④1週間単位の非定型的変形労働時間制の4種類があります。
 
1ヶ月単位の変形労働時間制の場合、1ヶ月の中で仕事量に繁閑のある業種や職種に活用できます。労使協定又は就業規則、その他就業規則に代わるものによって、1ヶ月以内の一定期間を平均して1週間の労働時間が40時間(特例の場合44時間)を超えない事を条件に、1週または1日の法定労働時間を超えて労働させることができます。
 
1ヶ月単位の変形労働時間制を導入するメリットは2つあります。1つは導入方法です。他の変形労働時間制は、労使協定の締結が必ず必要となりますが、1ヶ月単位の変形労働時間制は就業規則やその他これに準ずるもので導入することが出来るので、必ずしも労使協定を締結する必要がないということです。

もう1つは残業時間の計算のことです。通常1年単位変形労働時間制を導入する場合、残業時間を計算するために、その変形期間を通じて、労働時間の総枠を超えていないか計算する必要があります。

1ヶ月単位の変形労働時間制の場合、この変形期間が、賃金計算期間と同じにすることが出来る為、毎月の賃金を計算する際に残業時間を計算することが出来ることです。業務の繁忙に柔軟に対応出来、不必要な残業を抑制することにより無駄な人件費の削減に役立つ労務管理の手法「知恵」と言えます。

正社員・パートタイム労働者の格差を是正し人的資源を有効に活用する。

近年、パートタイム労働者の増加が顕著にみられますが、2006年の統計によりますと、雇用労働者の5人に1人、女性労働者については5人に2人の割合がパートタイム労働者(短時間労働者)であるという結果が出ています。産業別では外食産業や小売業、大手のスーパーマーケット等においては全従業員中の80%~90%がパートタイム労働者で構成されている事業所もあります。
 
一般的にパートタイム労働者の賃金は正社員より低く、その格差は年々拡大傾向にあり社会問題にもなっているワーキングプアは、主にパートタイム労働者の低賃金に起因しているとも言われています。賃金や待遇において、正社員との格差が拡大すればするほど勤労意欲やモチベーションは低下し、さらには企業への帰属意識は薄くなり、企業の活力も減退しかねません。
 
そこでこれらの問題を改善するために、2008年4月1日より改正パート労働法が施行されました。改正点のポイントの1つに正社員への転換の促進があります。内容は、①正社員を募集する際その情報をパートタイム労働者に周知すること。②正社員の配置を新たに行う場合にはその配置予定の事業所のパートタイム労働者に当該配置の希望を申し出る機会を与えること。③パートタイム労働者が正社員へ転換するための試験制度を設けること。等の措置を講じなければならないとされました。各企業が、改正法施行を機にパートタイム労働者の正社員化や雇用形態の多様化を模索しています。
例えば、ある企業では、パート社員を正社員として登用する「ショートタイム社員」制度を導入しました。「ショートタイム社員」とは、短時間の勤務でも、賃金や福利厚生面で、正社員の待遇が適用される社員です。

パートタイム労働者として入社しても3年以上たてば試験や面接を受けてショートタイム社員になる事が出来、フルタイム社員も子育てなどで労働時間が限られる間はショートタイム社員として働き、時間的な余裕が出来た時にはフルタイム社員に戻ることが出来ると言う様に、ライフステージ(ライフサイクル)にあわせて働き方を選ぶことができるというものです。このような雇用形態の多様化は確かに、事業主に労働コストの上昇という負担はかかります。

しかし、将来的に少子化が進むことで労働力不足となる事は避けられませんので、将来的な企業のあり方を考えれば、例にあげた「ショートタイム社員」制度等は、正規社員・非正規社員を問わず、労働意欲の向上を図り、優秀な人材を集め、優秀な人材を発掘し、優秀な人材を長期的に確保する事が出来る、すばらしい労務管理の手法「知恵」と言えるでしょう。

あっせん制度を活用し、個別労働紛争を解決する。

かつては、個別の労働紛争を解決する為に、裁判制度に頼っていました。しかし、裁判制度においては多くの時間と費用が掛かるだけでなく、裁判を起こす事で、後々、労使間でしこりを残す結果になりかねません。そこで、2001年10月1日に「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」が施行され、都道府県労働局において紛争調整委員会によるあっせん制度が実施されています。
対象となるのは、労働基準法等に明確に違反する案件以外で、募集・採用に関するものを除く、労働問題のあらゆる紛争です。

例えば、
①解雇、雇止め、配置転換・出向、労働条件の不利益変更等の労働条件に関する紛争
②セクシャルハラスメント、いじめ等に関する紛争
③労働契約の承継、同業他社への就業禁止等の労働契約に関する紛争
④その他、退職に伴う研修費用の返還など損害賠償をめぐる紛争等です。
 
あっせん制度の特徴としては、
①裁判手続きをより安く(あっせんの費用は行政機関が負担しますので、無料)且つ、手続きが裁判より簡素化されていますので、迅速に(原則として、1日で終了)結論がでます。
②あっせんの場は非公開なので、紛争当事者のプライバシーが保護されます。
③あっせんに応じるか否か、又、あっせん案に応じるか否かも自由ですが、当事者間であっせん案に合意した場合、当該あっせん案は民事上の和解契約の効力をもちます。
④労働者があっせんを申請した事を理由として、解雇その他不利益な取扱いをすることは法律で禁止されています。
 
実際にあっせん制度を活用する場合には、まず、
①あっせん申請書を各都道府県の労働局に提出します。
②労働局長が紛争調整委員会にあっせんを委託します。
③そして、申請書提出から1ヶ月程で「あっせん開始通知書(事件番号とあっせん委員の氏名記載)」が当事者に送られ、さらに1~2週間位であっせんの日取りなどが通知されその期日当日に事業所管轄の労働基準監督署で話し合いがおこなわれます。
 
あっせん制度というのは、民事裁判のように判定型・強制力のある制度とは違い、本質は、調整型の紛争解決です。あっせんを実施した際に、解決すれば、あっせん委員がその場で「合意文章」を作成し合意に至ります。

しかし、出席者の証言やその場に持ち寄られた証拠だけでは、どうしても解決に至らない時は残念ながら打切らざるをえないこともあります。

その場合は紛争最終手段として労働審判制度や民事裁判などの紛争解決手段を教えてくれます。
あっせん制度は労働訴訟に至るまでに第三者が仲裁に入り、労使共に労働問題を円満に解決する為の有効な労務管理の手段「知恵」ですので上手く活用しましょう。