おっちゃんたちを温める「一杯のかけそば」大みそか日雇い労働者に人情!(令和2年12月28日.毎日新聞)
大阪・西成のあいりん地区で、生活に困った日雇い労働者らに無償でうどんを提供している「淡路屋」に、各地から寄付金や食材の支援が届いています。全国に広がる善意への恩返しとして、店主の大前孝志さん(45)は集まった寄付を使って大みそかに年越しそばを振る舞っています。新型コロナウイルス禍と厳しい寒さが続く中、年を越すおっちゃんたちの心身を「一杯のかけそば」が温めています。●あいりん地区は日本最大の日雇い労働者の街として知られ、簡易宿泊所が建ち並ぶ。ラーメン屋などを経営していた大前さんは、2017年に淡路屋(西成区萩之茶屋2)を開業。20年3月からは、新型コロナの影響で仕事が減った労働者や生活に困っている人たちに、かけうどんを無料で出しています。口コミで広がり、労働者たちを癒やす「一杯のかけうどん」として毎日新聞が7月に報道。全国の50人以上から、現金や食材が次々と届いた。ミカンに白菜、スイカ、日本酒。「コロナでお店も大変なのに他人を思いやる行動に感動しました」「かけうどんが心をつないでくれればうれしいです」などと書かれた励ましの手紙も多く届いています。
●集まった寄付金は15万円を超え、大前さんは「こんなにたくさんの人に応援してもらい感無量。世の中の温かさと強いつながりを感じた」と語ります。岩手県北上市に住む会社員の和田幸子さん(51)は、報道を見て寄付をした一人。2年前に旅行で西成を訪れ、路上生活者らを目にしました。「驚いたが、地域で支え合う姿が印象的だった」。7月にインターネットで大前さんの取り組みを知り、現金や牡蠣(かき)を贈って協力を続けています。大阪市内で飲食店を経営する男性(54)も「時短営業などでみんなが苦しい中、無料提供はなかなかできることじゃない」と感銘を受け、淡路屋を訪れて寄付金を手渡しました。
●寒さは厳しさを増し、うどんを求めて訪れる人たちが年の瀬も後を絶たない。コロナ禍は収束せず、日雇いの仕事や住まいを失う人が今後も増えることが懸念されています。不安が膨らむ状況に、大前さんは「寄付してくれた人たちに感謝の気持ちを表したい」と、大みそかに年越しそばを配ることを決めました。12月31日は夕方から、そばとうどんを100杯ずつと日本酒を無料で振る舞う。「家族がいなくて一人きりの人や、初めて西成で不安な年末を迎える人もいるかもしれない。店に来て、少しでも温かい大みそかを過ごしてほしい」。当日は湯気が立ちこめる店内で、おっちゃんたちを出迎えます。
2020年12月28日 08:54