あっせん制度を活用し、個別労働紛争を解決する。
かつては、個別の労働紛争を解決する為に、裁判制度に頼っていました。しかし、裁判制度においては多くの時間と費用が掛かるだけでなく、裁判を起こす事で、後々、労使間でしこりを残す結果になりかねません。そこで、2001年10月1日に「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」が施行され、都道府県労働局において紛争調整委員会によるあっせん制度が実施されています。
対象となるのは、労働基準法等に明確に違反する案件以外で、募集・採用に関するものを除く、労働問題のあらゆる紛争です。
例えば、
①解雇、雇止め、配置転換・出向、労働条件の不利益変更等の労働条件に関する紛争
②セクシャルハラスメント、いじめ等に関する紛争
③労働契約の承継、同業他社への就業禁止等の労働契約に関する紛争
④その他、退職に伴う研修費用の返還など損害賠償をめぐる紛争等です。
あっせん制度の特徴としては、
①裁判手続きをより安く(あっせんの費用は行政機関が負担しますので、無料)且つ、手続きが裁判より簡素化されていますので、迅速に(原則として、1日で終了)結論がでます。
②あっせんの場は非公開なので、紛争当事者のプライバシーが保護されます。
③あっせんに応じるか否か、又、あっせん案に応じるか否かも自由ですが、当事者間であっせん案に合意した場合、当該あっせん案は民事上の和解契約の効力をもちます。
④労働者があっせんを申請した事を理由として、解雇その他不利益な取扱いをすることは法律で禁止されています。
実際にあっせん制度を活用する場合には、まず、
①あっせん申請書を各都道府県の労働局に提出します。
②労働局長が紛争調整委員会にあっせんを委託します。
③そして、申請書提出から1ヶ月程で「あっせん開始通知書(事件番号とあっせん委員の氏名記載)」が当事者に送られ、さらに1~2週間位であっせんの日取りなどが通知されその期日当日に事業所管轄の労働基準監督署で話し合いがおこなわれます。
あっせん制度というのは、民事裁判のように判定型・強制力のある制度とは違い、本質は、調整型の紛争解決です。あっせんを実施した際に、解決すれば、あっせん委員がその場で「合意文章」を作成し合意に至ります。
しかし、出席者の証言やその場に持ち寄られた証拠だけでは、どうしても解決に至らない時は残念ながら打切らざるをえないこともあります。
その場合は紛争最終手段として労働審判制度や民事裁判などの紛争解決手段を教えてくれます。
あっせん制度は労働訴訟に至るまでに第三者が仲裁に入り、労使共に労働問題を円満に解決する為の有効な労務管理の手段「知恵」ですので上手く活用しましょう。