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一般社団法人日本人材育成協会

JAPAN PERSONNEL DEVELOPMENT ASSOCIATION

最新情報

「2023年4月1日から中小企業についても月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が50%に引き上げられます」

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働き方改革の一環として2010年4月以降、大企業にのみ月60時間を超える時間外労働の法定割増賃金率50%以上とする規定が適用されてきました。中小企業については、企業経営の負担が過大にならないように考慮して猶予されていましたが、法改正により2023年4月1日より中小企業に対しても施行されることになりました。

【改正ポイント】
2023年4月1日から月60時間を超える時間外労働の割増賃金引上げ
中小企業についても月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率が50%になります。

深夜・休日労働の取り扱い
月60時間を超える法定時間外労働に対しては、使用者は50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。
(深夜労働との関係)
月60時間を超える時間外労働を深夜(22:00~5:00)の時間帯に行わせる場合、深夜割増賃金率25%+時間外割増賃金率50%=75%となります。
(休日労働との関係)
月60時間の時間外労働時間の算定には、法定休日に行った労働時間(法定休日労働の割増賃金率の35%)は含まれませんが、それ以外の休日に行った労働時間は含まれます。

代替休暇
月60時間を超える法定時間外労働を行った労働者の健康を確保するため引き上げ分の割増賃金の支払いの代わりに有給の休暇(代替休暇)を付与することができます。

就業規則の変更
割増賃金率の引き上げに合わせて就業規則の変更が必要となる場合があります。

「2022年10月からパートタイマー等の社会保険加入条件が101人以上の事業所で2カ月を超えて働く見込みへと改正」

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パートタイムやアルバイトで働いている方々の社会保険の加入要件が改正されます。2016年10月に、「週30時間以上労働」から「従業員規模501人以上で週20時間以上労働」に緩和されていましたが、2022年10月から「従業員規模101人以上で20時間以上労働」に改正されることになります。

【改正ポイント】
1.週の所定労働時間および一カ月の所定労働日数が、同じ事業所で同じ業務を行っている正社員等の一般社員の4分の3以上
2.上記の要件を満たしていなくても、次の「短時間労働者の要件」
【週の所定労働時間が20時間以上】
雇用期間が2カ月を超えて見込まれること(改正前は1年以上)】
【月額賃金が88,000円以上】
【学生以外】
にすべて該当する【従業員101人以上の企業に勤務していること(改正前は501人)】

週の所定労働時間が20時間以上
原則、契約上の労働時間が20時間以上あるかどうかで判断します。よって、時間外労働など臨時の労働時間は含みません。契約上は20時間未満であっても、実労働時間が2カ月連続して週20時間以上となり、引き続き20時間以上見込まれる場合には、3カ月目から加入しなければなりません。

月額賃金
賃金月額が88,000円(年収106万)以上であることが必要ですが、この月額には
時間外割増賃金・休日割増賃金・深夜割増賃金・ボーナス・業績給・慶弔見舞金など臨時に支払われる賃金・皆勤手当・通勤手当・家族手当・住宅手当等々は、含めません。

短時間労働者の企業規模による開始時期の変遷
平成28年10月(2016年):従業員数501人以上規模
平成29年04月(2017年):従業員数500人以下の企業は、労使合意により加入可能
令和04年10月(2022年):従業員数101人以上規模
令和06年10月(2024年):従業員数51人以上規模を予定しています。
 
対象 要件 平成28年10月~(現行) 令和4年10月~(改定) 令和6年10月~(改定)
事務所 事業所の規模 常時500人超 常時100人超 常時50人超
短時間労働者 労働時間 週の所定労働時間が20時間以上 変更なし 変更なし
賃金 月額88,000以上 変更なし 変更なし
勤務時間 継続して1年以上使用される見込み 継続して2か月を超えて使用される見込み 継続して2か月を超えて使用される見込み
適用除外 学生ではないこと 変更なし 変更なし

「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金は、短時間勤務、シフトの日数減少等も対象」

事業主の指示を受けて休業した労働者のうち、休業手当の支払いを受けることができなかった方に対し、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金が支給されます。
1日8時間から3時間の時短勤務になったり、シフトが週5回から3回に減少した等も対象になります。


【支給額】
休業前の平均賃金の80%×休業日数
(上限日額1万1000円)
中小企業の労働者と、大企業のシフト制労働者が対象となります。
1日4時間未満の就労であれば、1/2日休業したものとします。

【ポイント】
いわゆる日々雇用やシフト制の方も、実態として更新が常態化しているようなケースにおいて、申請対象月において、事業主が休業させたことについて労使の認識が一致した上で支給要件確認書を作成すれば下記も対象となります。
元々に予定していた勤務の日に、コロナの影響で事業主から休むよう言われた。
店が時短営業になり、1日当たりの勤務時間が短くなった。
半年以上働いており、コロナの影響がなければ同様の勤務を続ける予定だった。

■休業した期間及び申請期限
中小企業:
休業した期間:①令和2年10月~令和3年9月 申請期限:令和3年12月31日
休業した期間:②令和3年10月~11月 申請期限:令和4年2月28日

大企業:
休業した期間:①令和2年4月~6月     申請期限:令和3年12月31日
休業した期間:②令和3年1月8日~9月 申請期限:令和3年12月31日
休業した期間:③令和3年10月~11月 申請期限:令和4年2月28日

オンライン、郵送の2種類あり、労働者の方から直接申請することもできます。

お問い合わせ
厚生労働省新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/kyugyoshienkin.html

お電話でのお問い合わせは厚生労働省コールセンターへ
厚生労働省新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金コールセンター
電話:0120-221-276
(月)~(金) 8:30~20:00 / (土)(日)(祝) 8:30~17:15

「2021年4月1日から、36協定等の届出書類に対する押印廃止を施行」

押印廃止(透明)
厚生労働省の労働政策審議会労働条件分科会は36協定などの届出等の押印原則を見直すため、労働基準法施行規則等の一部を改正する方針です。

法令上の届出様式に、使用者及び労働者の記名押印又は署名を求めず、氏名の記載のみとします。押印を求めている法令様式等は押印欄を削除し、電子申請における電子署名の添付も不要とします。
労働者の過半数代表者の記載のある法令様式には、適格な協定当事者であるかについては、様式上に「チェックボックス欄」を追加し、確認する手段とします。

[対象となる届け出等 (抜粋)]
・36協定届
・貯蓄金管理に関する協定届
・解雇予告除外認定申請書
・変形労働時間制に関する協定届
・非常災害等の理由による労働許可申請届
・断続的な宿日直勤務許可申請書
・みなし労働に関する協定届
・専門及び企画業務型裁量労働制に関する協定届
・休憩自由利用除外許可申請書
・監視断続的労働に従事する者に対する適用除外申請書
・高度プロフェッショナル制度に関する決議書
・職業訓練に関する特例許可申請書
・就業規則にかかる意見書…等

特に36協定届に関しては、留意事項として、押印欄の廃止は「協定届(協定書の内容を届け出るための届出書)」にのみ適用されますので、労使協定届と併せて締結する「協定書(労使で決めた具体的内容をまとめ署名・押印したもの)」には、従来通り労使の押印、署名が必要です。

「民法改正とあわせた、賃金等請求権の消滅時効期間の延長」

民法改正
明治時代に作られた民法が120年を経て初めて全般的に見直され、2020年4月に改正民法が施行されることに決まりました。200項目にも及ぶ改正事項の中には、瑕疵担保責任の変更や短期消滅時効の廃止、定型約款に関する規律の制定、保証契約の見直しなど、法務担当者が必ず知っておくべきポイントが多くあります。
民法改正に伴い、民法にあわせた労働基準法の賃金等請求権の消滅時効期間の延長がなされます。


【法改正:賃金等請求権の消滅時効期間の延長】
民法の改正とあわせて、賃金等請求権の消滅時効期間が現行2年から、原則5年(当分の間3年)に延長されました。

【2020年4月1日からの改正事項】
賃金請求権の消滅時効(2020年3月31日まで:2年)⇒(改正:5年)〈当分の間:3年〉
付加金の請求期間  (2020年3月31日まで:2年)⇒(改正:5年)〈当分の間:3年〉
賃金台帳等の保存期間(2020年3月31日まで:3年)⇒(改正:5年)〈当分の間:3年〉
 
(注)当分の間とは2020年4月1日から5年後を目途に見直し(改正:5年)を検討する予定とされています。

「2019年4月1日から、労働条件の明示を電子化できるようになりました」

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労働基準法では、労働契約を締結する際に、労働者に労働条件の明示義務があります。明示の方法は、これまで書面の交付に限られていましたが、2019年4月1日からは、労働者が希望した場合は、FAXや電子メール、SNS等でも明示できるようになります。
ただし、労働契約の締結時に明示を怠ったり、労働者が希望していないにもかかわらず、電子メール等のみで明示したりすることは、最高で30万円以下の罰金となる場合があります。

 
◎ポイント
原則、書面交付が必要ですが、労働者が希望した場合は、以下のような方法で明示することができるようになります。ただし、出力して書面を作成できるものに限られます。
なお、労働者の個人的な事情によらず、一般的に出力可能な状態であれば、出力して書面を作成できると認められます。メール・SNSでの明示には、印刷や保存がしやすいよう添付ファイルで送りましょう。
①FAX
②Eメールや、Yahoo!メール、Gmail等のWebメールサービス
③LINE等のSNSメッセージ機能
(注)第三者に閲覧させることを目的としている労働者のブログや個人のホームページへの書き込みによる明示は認められません。
 
◎留意点
紛争を未然に防止する観点から、
・労働者が本当に電子メール等による明示を希望したか、個別にかつ明示的に確認しましょう。
・本当に到達したか、労働者に確認しましょう。
・なるべく出力して保存するように、労働者に伝えましょう。
・SMS(ショート・メール・サービス)等による明示は禁止されていませんが、PDF等のファイルが添付できず、文字数制限もあるため、望ましくはありません。
・義務ではありませんが、明示した日付、送信した担当者の氏名、事業場や法人名、使用者の氏名を記入したりするとトラブルが防止できます。

「政府が電子マネー(デジタルマネー)での給与支払い解禁を検討」

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政府の方針として、電子マネー(デジタルマネー)を使って給与を支払うことを解禁する検討を進めているそうです。

 

もともと賃金の支払い方法は、通貨で手渡ししなければ刑事罰が設定されており、例外として一定の要件を満たせば、銀行口座や証券総合口座への支払いが認められています。これらに加えて2019年にも賃金通貨支払いの例外としてデジタルマネーでの送金による賃金支払いができるようになりそうです。

 

すでに、金融庁や関連業と調整に入っているようで、現金や銀行口座等の振込だけでなくスマートフォンアプリ、プリペイドカードなどでの賃金支払いを全国で容認することになりそうです。

 

解禁に際し、労働者の自由選択により同意することで可能にします。企業が指定したカードや決済アプリに入金する仕組みで、入金された給与をATMで月1回以上、手数料なしで現金で引き出せること、経済を担う業者の破綻時に資金が保全される体制の確保し、不正引き出し被害への補償を条件にします。

価格変動の激しい仮想通貨は使えないということです。

 

◎消費税の引き上げに伴うキャッシュレス決済への税還元も追い風に、電子マネー普及に本腰を入れた感じがします。当初の予定では、国家戦略特区で試行するということでしたが、現在の方針としては、利用が見込まれる外国人労働者の増加に備えて地域を限定しない予定です。2018年度中にも労働政策審議会(厚労相の諮問機関)で議論を始めるところです。

 

一方、銀行口座を通さずに、賃金・給与をデジタルマネーによっての受け取りが当たり前になってしまえば、銀行によっては、銀行口座の利用者が減ることにより、為替手数料の減少等を通じてシステム維持上のリスクや地銀を中心にバンキングシステムの統合や、銀行本体の合併等に拍車がかかるといった問題が生じる事が懸念されます。

「年次有給休暇5日の時季指定義務化」

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2018年6月29日の参院本会議にて、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律が可決、成立しました。(2018年7月6日公布:施行日は2019年4月1日となります。)

 

『年次有給休暇5日の時季指定義務化』とは

今回の改正では、年次有給休暇の時季指定義務化について以下のように定められました。

また、今回の法改正による義務に違反して、対象となる従業員に有給休暇の指定をしなかった場合は、30万円以下の罰金が課されます。

 

労働基準法改正では、年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者に対し、1年間で最低「5日」は会社が労働者に年次有給休暇を取得させるという項目が追加されました。つまり、「5日」については会社が時季指定権を持つことになり、使用者は労働者から希望を聞いた上で「○月○日に有給休暇を取得してください」というように時季を指定しなければならなくなります。(労働者の時季指定や計画的付与により取得された年次有給休暇の日数分については指定の必要はありません)

 

【義務が発生する対象労働者】⇒ 年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者

【時季指定をしなければならない日数】⇒ 5日

【取得期間】⇒ 年次有給休暇の付与日より1年以内

 

◎時季を指定して有給休暇を与えなくても良い場合

以下のような場合は、会社側が時季指定を行う必要はありません。

 

(1)1年に5日以上の有給休暇を自主的に取得している場合

(2)年次有給休暇の計画的付与で5日以上付与される場合

(3)「労働者自らの取得2日+計画的付与3日」など 計画付与と自主的に取得した年次有給休暇の日数が5日に達する場合

 

つまり、どのような形であれ 労働者が年間で「5日」以上、年次有給休暇を取得できていれば 時季指定を行う必要はありません。逆に、年次有給休暇が年間で5日に達しない場合は、足りない日数のみ時季指定を行う必要があります。

 

◎年次有給休暇の義務化対策の1つとして「年次有給休暇の計画的付与制度」が挙げられます。

 

年次有給休暇の計画的付与制度とは、労働者が有給休暇を取得しやすくするために企業側があらかじめ有給休暇の取得日を割り振る制度のことです。

年次有給休暇の日数のうち5日は個人が自由に取得できる日数として必ず残しておく必要があるため、計画的付与の対象となるのは年次有給休暇の日数のうち、5日を超えた部分となります。

具体的には、以下のような計画的付与があります。

 

(1)企業もしくは事業所全体での一斉付与

(2)班・グループ別の交代制付与

(3)年次有給休暇付与計画表による個人別付与

 

年次有給休暇の計画的付与を実施するためには、以下のような手続きが必要となります。

 

①就業規則による規定

年次有給休暇の計画的付与制度を導入する場合には、まず、就業規則に「5日を超えて付与した年次有給休暇については、従業員の過半数を代表する者との間に協定を締結したときは、その労使協定に定める時季に計画的に取得させることとする」などのように定めることが必要です。

 

②労使協定の締結

実際に計画的付与を行う場合には、就業規則の定めるところにより、従業員の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者との間で、書面による協定を締結する必要があります。

なお、この労使協定は所轄の労働基準監督署に届け出る必要はありません。

労使協定で定める項目は次のとおりです。

 

〇計画的付与の対象者(あるいは対象から除く者)

〇対象となる年次有給休暇の日数

〇計画的付与の具体的な方法

〇対象となる年次有給休暇を持たない者の扱い

〇計画的付与日の変更

 

【厚生労働省資料】
(リーフレット)年次有給休暇の時季指定義務について

「働き方改革関連法案の進捗状況」

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今国会での最重要法案と位置付けています「働き方改革関連法案」の進捗状況です。閣議決定について、当初は2月に予定されていましたが、裁量労働制の対象拡大に関して重要なデータが不適切だった問題により大幅にずれ込み4月6日にようやく決まりました。しかしながら、政府の公文書偽造事件など野党の圧力が強まる中、今国会での成立の見通しが徐々に不透明になっています。

 

◎最終的に国会に提出が予定されている3本柱
①労働時間規制緩和策
・高度プロフェショナル制度の新設---高収入の専門職の労働時間規制を外す新たな仕組み。

②労働時間規制強化策
・残業時間の罰則付き上限規制---年間720時間以内、繁忙月の上限100時間未満など具体的な時間数を定めます。
・勤務間インターバル制度の努力義務化---終業から始業までに一定の休息を確保するように求めます。

③その他
・同一労働同一賃金---正規・非正規労働者の不合理な待遇差を是正する法律の施行。

 

◎今年の国会もしくは秋の臨時国会までに成立した場合の施行日
残業時間の上限規制については、企業の準備不足への懸念に配慮し、残業時間の上限規制の中小企業への適用を当初予定から1年延期し2020年4月から、建築業及び運輸業については2025年から段階的に導入を予定しています。同一労働同一賃金に関しても予定を1年延期し中小企業は、2020年4月。大企業は、2021年4月からの施行を予定しています。

 

◎裁量労働制の対象拡大の全面削除
なお、政府が当初国会に提出する予定であった「裁量労働制の対象拡大」については、導入をめぐる労働時間の調査に不適切なデータが相次いで発覚し混乱が広がったことから今回は、法案から全面削除されています。

「有期労働者の『無期転換ルール』の本格的な運用開始」

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2018年4月1日より、有期労働者の「無期転換ルール」の本格的な運用が開始されます!!
有期労働者の「無期転換ルール」とは、2013年4月1日に施行された労働契約法18条の規定に基づき「同一の使用者との間で、有期労働契約が反復更新されて5年を超えた場合、有期契約労働者からの申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換することができるルール」のことです。無期契約の申込みをするかしないかは、労働者が自由に決めることができますが、使用者は、その申し出を拒否することはできません。

5年間という通算契約期間のカウントは、あくまでも2013年4月1日以後に開始した有期労働契約が対象となりますので、本格的な無期転換申込み権は、2018年4月から発生することになります。
 
1.無期転換ルールの概要
◎5年を超えた有期労働者が無期転換の申込みをすると、使用者は申し込みを承諾したものとみなされ、その時点で無期労働契約が成立します。無期に転換されるのは、申込時の有期労働契約が終了する翌日からです。なお、有期労働契約とその次の有期労働契約の間に、契約が存在しない空白期間が6ヶ月以上あるときは、その空白期間より前の有期労働契約はすべて通算期間に含めることはできません。これをクーリングといいます。
 
◎無期転換ルールの適用を逃れることを目的として、同ルールが適用される前に雇止めを行うことは、労働契約法19条に規定する雇止め法理に基づき、雇止め無効と判断される場合があることから、慎重な対応が求められます。また、無期転換を申し込まないことを契約更新の条件とするなど、あらかじめ労働者に無期転換申込権を放棄させることもできません。法の趣旨から、そのような意思表示は無効とされます。
 
◎転換後の無期労働契約の労働条件(職務、勤務地、直前の有期労働契約と同一になります。「別段の定め」には、労働協約、就業規則、個々の労働契約(無期転換にあたり労働条件を変更することについての労働者と使用者との個別の合意)が、該当します。無期転換後、職務の内容などが変更させることは、無期転換を円滑に進める観点から望ましくありません。
 
2.無期転換後の労働者の待遇
◎無期転換ルールは、有期労働契約から無期労働契約に転換するもので、必ずしも正社員に転換するものではありません。契約期間以外の労働条件などは、従来のままでの差し支えないとされています。もっとも、今後予定されている「同一労働同一賃金の法律」が施行されることになれば、労使紛争に基づく判例法理により賃金の扱いにおいても、正社員との待遇の差が縮まる可能性はあるでしょう。
 
◎現状として、無期転換後の労働者の扱いについてですが、次の3つのパターンが考えられます。
①無期解約労働者:契約期間のみを無期とし、その他の労働条件は直前の有期労働契約時と同一とする。
②多様な正社員:無期転換者を、既存あるいは新設の「多様な正社員」に移行させ、その区分の労働条件を適用する。
③正社員:無期転換者を、既存の「正社員」に移行させ、その区分の労働条件を適用する。
 
◎無期転換制度の規定については、無期転換後の労働者をあらかじめ定めた区分に従って企業内でどのように位置づけるかを検討し、具体的な制度設計の上、就業規則等の改訂が必要であり、それなりの時間と労力を要することになりますので、早急な準備をすすめておきましょう。

【厚生労働省資料】
(飲食業)多様な正社員及び無期転換ルールに係るモデル就業規則と解説
(小売業)多様な正社員及び無期転換ルールに係るモデル就業規則と解説

「改正個人情報保護法のポイント」

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改正・個人情報保護法が2017年5月30日から施行!!

いままで個人情報保護法は、保有している個人情報が5000人分以下の事業者には適用されませんでしたが、2017年5月30日以降は、そういった保有数5000人分以下の個人事業にも適用されるようになります。事業が営利か非営利かを問わないため今後は、NPO・自治会・町内会・学校の同窓会などの非営利組織も含め個人情報を利用するすべての事業所が対象になることを意味します。以下に施行される改正のポイントを説明します。
 
①個人情報の定義が明確にされています。個人情報とは、住所・氏名・生年月日・性別などの特定の個人を識別できるものですが、顔・指紋・掌紋・虹彩・手指静脈・声紋・DNAといった特定の個人の身体の一部の特徴を電子計算機のために変換した認識データや旅券番号や免許番号といった対象者ごとに異なる番号及びビッグデータとして利用する商品の購入または書類に付される符号も個人識別符号として個人情報となります。また、「本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するもの」として「要配慮個人情報」が追加されています。こちらに関しては、原則として本人の同意を得ずに取得することは認められず、利用にも制限があります。例えば一般健康診断の結果は当該労働者に渡すものですが、要配慮個人情報に該当しますので、人事管理を行う部署で記録を保持する場合には本人の同意が必要となります。
 
②利用目的に関する対応については、個人情報の取得時にはその利用目的をできる限り明確にしておくことや利用目的の範囲を超えた利用には事前の本人の同意が求められていますが、この利用目的を変更する場合の制限が緩やかになっています。特に本人の同意を得ずに認められる利用目的の変更に関して、これまでは「変更前の利用目的と相当の関連性を有すると合理的に認められる範囲」となっていましたが、この一文のうち「相当の」という言葉が削除されました。一方、本人の同意を得ることなく個人情報を第三者に適用するオプトアウトと呼ばれる手法については、利用に際し本人の求めに応じ提供を停止することや本人がオプトアウトになっていることを容易に知り得ることが条件となりますが、こういったオプトアウトの手続きを行っていることに関して、個人情報保護委員会への届け出が不可欠となります。
 
③不正な利益を図る行為に対し「個人情報データベース等不正提供罪」が新設されました。これまでの個人情報保護法では、個人情報を不正に提供したものに対する直接の刑事罰はありませんでしたが、当該従業者等の所属する法人にも両罰規定を定めた直接罰を規定しました。また個人情報の開示・訂正・利用停止等に関して、本人が裁判を行う権利が明確になりました。これまでは、こういった裁判上の権利の有無が明確にされていませんでしたが、改正法では裁判上の権利があることを明確化しています。
 
他にもネットを通じて海外事業者が持つ日本の消費者から得たアカウント情報の扱い方といった海外企業への個人データの第三者提供など様々なポイントを含む改正ですので、以下に記しましたリンク先で「改正個人情報保護法」に関する情報をご確認ください。
 

個人情報保護委員会
データの時間

「育児介護休業法の2017年改正における変更点」

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特に出産や育児・介護休業に伴って受けるハラスメントが問題になっております。労働者保護の観点から、2017年1月1日より仕事と介護を両立しやすくするための働き方改革として「育児・介護休業法」が施行されました。もともと制度自体がわかりにくいというのもあって、馴染みにくい法律でもありますので、新旧を比較できるように変更点を記しました。

 
◎育児休業関係の改正点
【改正前】
①子の看護休暇は、1日単位での取得でした。
②有期契約労働者の育児休業については、申し出時点で過去1年以上継続して雇用されていて、子が1歳になった後も雇用継続の見込みがあること。また、子が2歳になるまでの間に雇用契約が更新されないことが明らかである者を除きました。
③育児休業等の対象になるのは、法律上の親子関係がある実子・養子に限りました。
④マタハラ等の防止対策として、事業主による妊娠・出産、育児休業、介護休業等を理由とする不利益取扱いを禁止しています。
 
【改正後】
①子の看護休暇は、半日(所定労働時間の2分の1)単位での取得が可能になりました。
②申し出時点で過去1年以上の継続雇用をされていることに変更はないが、子が1歳6カ月になるまでの間に雇用契約がなくなることが明らかでないことに緩和されました。
③特別養子縁組の監護期間中の子や養子縁組里親に委託されている子なども、新たに育児休業制度などの対象に追加されました。
④マタハラ等の防止対策として、従来の不利益取扱いに加え、上司・同僚からの妊娠・出産、育児休業、介護休業等を理由とする嫌がらせ等を防止する措置を講じることを事業主へ新たに義務付けるとともに、派遣労働者の派遣先にも育児休業等の取得等を理由とする不利益取扱いの禁止および妊娠・出産、育児休業、介護休業を理由とする嫌がらせ等の防止措置の義務付けを新設いたしました。
 
◎介護休業関係の改正点
【改正前】
①介護休業は、要介護状態の家族1人につき93日まで原則1回だけ取得可能でした。
②介護休暇の取得は、1日単位で年に5日まで、要介護状態の対象家族が2人以上いる場合は10日まで取得可能でした。
③介護のための所定労働時間の短縮措置等(選択的措置義務)について、介護休業と通算して93日の範囲内で取得可能でした。
④介護休業給付金は従前、休業開始前賃金の40%が給付されました。
 
【改正後】
①介護休業は、要介護状態の家族1日につき通算93日まで、3回を上限として、介護休業を分割して取得可能になりました。
②介護休暇は、半日(所定労働時間の2分の1)単位での取得が可能になりました。
③介護のための所定労働時間の短縮措置等(選択的措置義務)について、介護休業とは別に、利用開始から3年の間で2回以上の利用が可能になりました。
④介護休業給付金が67%に増額されました(介護休業開始が平成28年8月以降の場合)。
 
【新たに加わったこと】
⑤介護のための残業の免除について、対象家族1人につき、介護終了まで利用できる所定外労働の制限を新設しました。

「事業主のマタハラ防止措置義務が2017年1月1日より施行」

マタハラ
「マタハラ」とは、マタニティハラスメントの略で、働く女性が妊娠・出産・育児をきっかけに職場で精神的・肉体的な嫌がらせを受けるなどの不当な扱いが、「マタハラ」として社会問題化しました。これをきっかけとして男女雇用機会均等法・育児介護休業法が見直され、「事業主のマタハラ防止措置義務」が加えられることになりました。2017年1月1日から使用者は、この措置を行わなければなりません。
 
現行の男女雇用機会均等法・育児介護休業法では、「妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とする不利益取扱いをしてはならない。」と規定していますが、今回の改正は、これに加えて「上司・同僚が職場において、妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とする就業環境を害する行為をすることがないよう防止措置を講じなければならない」とする防止措置義務を新規に追加したことがポイントとなります。
 
◎具体的に講ずべき措置
 
①「事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発」
(イ)職場における妊娠、出産等に関するハラスメントの内容及び妊娠、出産等に関す否定的な言動が職場における妊娠、出産等に関するハラスメントの発生の原因や背景となり得ること、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントがあってはならない旨の方針並びに制度等の利用ができる旨を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
(ロ)職場における妊娠、出産等に関するハラスメントに係る言動を行った者については、厳正に対処する旨の方針及び対処の内容を就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
 
②「相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」
事業主は、労働者からの相談に対し、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応するために必要な体制の整備に向けて、「相談への対応のための窓口をあらかじめ定める」とともに、「相談窓口の担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにする」措置を講じなければならない。
 
③「職場における妊娠、出産等に関するハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応」
事業主は、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントに係る相談の申出があった場合に、その事案に係る事実関係の迅速かつ正確な確認及び適正な対処として、
(イ)事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認する。
(ロ)イにより、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントが生じた事実が確認できた場合は、速やかに被害を受けた労働者(被害者)に対する配慮のための措置を適正に行う。
(ハ)ロにより、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントが生じた事実が確認できた場合は、言動の行為者とされる者(行為者)に対する措置を適正に行う。
(ニ)改めて職場における妊娠、出産等に関するハラスメントに関する方針を周知・啓発する等の再発防止に向けた措置を講ずる。
 
④「職場における妊娠、出産等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置」
事業主は、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するため、
(イ)業務体制の整備など、事業主や妊娠等した労働者その他の労働者の実情に応じ必要な措置を講じなければならない。(但し派遣労働者については、派遣元事業主に限る)
(ロ)妊娠等した労働者の側においても、制度等の利用ができるという知識を持つことや、周囲と円滑なコミュニケーションを図りながら自身の体調等に応じて適切に業務を遂行していくという意識を持つこと等を、妊娠等した労働者に周知・啓発することが望ましい。
 
⑤「その他併せて講ずべき措置」
(イ)職場における妊娠、出産等に関するハラスメントに係る相談者・行為者等の情報は、当該相談者・行為者等のプライバシーに属するものであることから、相談への対応または当該妊娠、出産等に関するハラスメントに係る事後の対応に当たっては、相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者に対して周知すること。
(ロ)労働者が職場における妊娠、出産等に関するハラスメントに関し相談をしたこと、または事実関係の確認に協力したこと等を理由として、不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発するといった措置も、講じなければならない。
 
以上の留意点を踏まえた上で改正の内容を把握するとよいでしょう。

「年金受給資格期間が25年⇒10年に短縮」

年金
年金を受給できる資格を得られる期間が「25年」から「10年」に短縮される見通しとなりました。
 
◎年金受給資格期間を10年に短縮
改正の発端は平成24年8月に成立した年金機能強化法により実施される事が決まったことです。年金機能強化法は、少子高齢化が進む中でも年金が生活の機能を果たせるようにという事でできた法律です。消費税を上げて社会保障への財源に充てる事で実施されるものでした。
その後、「受給資格期間を10年に短縮」の経過ですが、元々平成27年10月に「消費税率を10%までアップする事を条件に、10年以上に短縮される事」になっていましたが、消費税10%アップが平成29年4月に再延期され、更にまたも消費税アップが平成31年10月まで再々延期された事で、当然ながら年金支給要件の10年短縮も延期されるのかと思われましたが、今後の方針として平成29年10月の支払い分から「10年」に短縮するとしており、臨時国会での成立を目指すとしています。消費税という財源を確保出来ない中での、年金受給資格期間10年への短縮、という意味合いを持ちます。ちなみに受給資格期間を10年に短縮した場合に必要となる国費は年間約650億円と試算されています。
 
◎年金支給額
現在、年金の受給資格を得るには保険料納付期間と免除期間などを合わせて「25年」が必要となっており、保険料納付期間が25年に満たずに年金を受給できないという人が多かったようですが、約64万人が新たに年金の受給が可能になる見通しです。
 
【具体的にもらえる年金額の試算】
・現在の制度では原則として
40年の加入では、月額65,741円(年額78,8892円)
25年の加入では、月額41,091円(年額49,3092円)
・改正後では原則として
20年の加入では、月額32,875円(年額39,4500円)
10年の加入では、月額16,433円(年額19,7196円)
 
◎無年金者数保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が「25年」に満たない者)
 
国民年金の保険料支払いは原則60歳までですが、場合によっては70歳まで支払いが可能になります。しかし、現状の加入期間が短いか、全く保険料を払っていないために、70歳まで保険料を支払っても加入期間が10年に満たない高齢者が一定数いることになります。

【70歳まで納付しても25年に満たない者平成19年4月時点)
60歳未満 ⇒ 45万人
60歳~64歳 ⇒ 31万人
65歳以上 ⇒ 42万人
 
無年金者についてですが、塩崎厚生労働相によりますと、年金を受け取るのに必要な保険料の納付期間を25年から10年に短縮する法案が成立しても、加入期間が足りず約26万人が無年金のままになるとの推計を示しています。

「最低賃金引上げに関する中小企業向けの個別支援対策事業」

中小企業(社長)
今年も10月に、政府による最低賃金の引き上げが行われます。本年度は3%の引き上げとなる全国加重平均で24円の増額が予定されています。

◎最低賃金の引き上げに伴う助成事業
今回の最低賃金の引き上げ率は、1億総活躍プランにおける安倍首相の意向が強く反映されたもので、非正規労働者の待遇改善を図ることと併せ、低迷する個人消費を押し上げる狙いがあります。当面の目標として、毎年3%ずつ引き上げながら全国平均1000円を目指すと説明しています。
反面、こういった大幅な最低賃金の引き上げは、中小企業にとってかなり厳しい負担になります。そこで中小企業へ向けての対策として政府側は、「大幅な最低賃金引き上げを実現していく上で、これまで以上に、中小企業や小規模事業者の生産性の向上につながる支援事業に政府全体でしっかりと取り組んでいく。」と表明しています。
 
◎最低賃金引上げに向けた中小企業・小規模事業者への支援事業
厚生労働省は経済産業省と連携し、最低賃金の引上げにより、影響を受ける中小企業に対する以下の支援を実施しています。
 
全国的支援策:ワン・ストップ&無料の相談・支援体制を整備(最低賃金引き上げに向けた中小企業専門家派遣・相談等支援事業)
生産性の向上などの経営改善に取り組む中小企業の労働条件管理などのご相談などについて、中小企業庁が実施する支援事業と連携して、ワン・ストップで対応する全国47か所の相談窓口を開設しており、例えば生産方法や販売方法の改善あるいは、賃金制度の見直しをどうすればいいかといった悩みに応じています。
 
業種別支援策:最低賃金引き上げに向けた、業種別団体の賃金底上げのための取り組みを支援(業種別中小企業団体助成金の支援)
全国規模の業界団体による傘下企業の賃金引上げを目的とした、販路拡大のための市場調査やビジネスモデル開発といった、労働能率増進のための取組に対して1団体2,000万円を上限に助成をします。
 
取り組みの例として、全国希望の中小企業団体による
・新技術研修会、経営改善セミナーの開催
・ネット販売など売り上げ拡大策の実験
・共同購入・省エネ・IT導入といったコスト削減の実験
・価格転嫁キャンペーンの実施 等々
 
個別支援策:最低賃金の引き上げに向けた中小企業・小規模事業者の取り組みを支援(業務改善助成金の支給)
事業場内の時間給が800円未満の労働者の賃金を引き上げた中小企業・小規模事業者に対して、労働能率の増進に資する設備・機器の導入等に係る経費の一部を100万円を上限として助成します。
 
(業務改善助成金支給の要件)
1 賃金引上計画の策定
事業場内の時間給 800 円未満の労働者の賃金を60円以上引上げ(就業規則等に規定)
2 引上げ後の賃金支払実績
3 労働能率の増進に資する機器・設備を導入(※)することにより業務改善を行い、費用を支払うこと( (1) 単なる経費削減のための経費、 (2) 職場環境を改善するための経費、 (3) 社会通念上当然に必要となる経費は除きます。)
4 解雇、賃金引下げ等の不交付事由がないこと等
支給額:上記3に該当する経費の2分の1。ただし、常時使用する労働者数が企業全体で30人以下の事業場は4分の3(上限額は100万円)。
 
労働能率の増進に資する設備・機器の導入例
・POSレジシステム導入による在庫管理の短縮
・リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮
・インターネット受発注機能があるホームページの作成による業務の効率化
・顧客・在庫・帳票管理システムの導入による業務の効率化
・専門家による業務フロー見直しによる顧客回転率の向上等
 
◎期待される支援策
最低賃金引上げの円滑な実施における、中小企業に対するアンケート調査では、国に期待する支援策として「社会保険料負担等の軽減」(52.3%)を挙げる回答が最多でした。以下、「設備投資への支援」(35.1%)、「人材育成、教育への支援」(31.3%)、「販路の確保・拡大」(30.3%)などが挙げられています。なお、「社会保険料負担等の軽減」と回答した事業場は、時給換算800円未満の労働者がいない事業場でも47.0%と半数に近く、時給800円未満の労働者の有無にかかわらず社会保険料の負担減を期待する事業場が多いようです。

「パートタイマーの社会保険加入の壁が10月から年収約106万円に」

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2016年10月からパートタイマーなどで働く方々の社会保険の加入要件が拡大されます。
さしあたり501人以上の企業は要チェックです!使用者及び短時間労働者の中には、社会保険料の負担を避けるため敢えて労働日数や労働時間を調整して契約するケースが多数見受けられます。
今回の見直しにより社会保険加入基準が、平成28年10月1日から大きく変更されることになりましたので、労使ともに新しい基準を確認しておきましょう。
 
◎適用拡大の主旨と見通し
この見直しは、①企業に勤務していながら厚生年金・健康保険の恩恵を受けられない非正規労働者に厚生年金健康保険を適用し、セーフティネットを強化することで、社会保険における「格差」を是正することや、②社会保険制度における、働かない方が有利になるような仕組みを除去することで、特に女性の就業を促進して、今後の人口減少社会に備えることを目的としています。
また、社会保険の財源確保についても今回の見直しにより短時間労働者約25万人が新たに厚生年金に加入する見通しです。さらに今後、最低賃金を1000円に引き上げる方針もあり、賃金水準が順調に上昇し、現在の未加入者すべてが新しい基準に該当することになれば、加入者が現行比約250万人増加することになるといいます。
 
◎適用拡大の5要件
現在の短時間労働者の社会保険加入の要件は、労働時間・日数が正社員の「概ね4分の3以上」であれば加入となっていましたが、2016年10月1日から以下のように適用拡大されます。
 
     
週の所定労働時間が20時間以上あること
賃金の月額が8.8万円(年収106万円相当)以上であること
勤務期間が1年以上見 込まれること
学生を適用除外とすること
規模501人以上の企業(特定適用事業所)を強制適用対象とすること






 
◎週の所定労働時間が20時間以上あること
適用基準を満たすか否かは契約している「所定労働時間」により判断がなされます。
1週間の所定労働時間とは、就業規則、雇労働条件通知書等により、その労働者が通常の週に勤務すべきこととされている時間のことです。
週の所定労働時間によりがたい場合の判断は?
次のように1週間あたりに換算して判断します。
・所定労働時間が1ヶ月単位で定められている場合:(1ヶ月の所定労働時間を12分の52で除して算定)
・特定の月の所定労働時間に例外的な長短がある場合:(特定の月を除いた通常の月で上記により判断)
・所定労働時間が1年単位で定められている場合:(1年間の所定労働時間を52で除して算定)
・1週間の所定労働時間が短期的かつ周期的に変動する場合:(加重平均により算定)
 
◎賃金の月額が8.8万円(年収106万円相当)以上であること
収入基準となる月額賃金8万8000円に含むのは、最低賃金法による賃金に相当するものであり、次に掲げるものは除きます。
・臨時に支払われる賃金(結婚手当等)及び1月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)
・所定時間外労働、所定休日労働及び深夜労働に対して支払われる賃金(割増賃金等)
・最低賃金法において算入しないことを定める賃金(精皆勤手当、通勤手当及び家族手当)
 
◎勤務期間が1年以上見込まれること
「雇用見込み期間が1年以上」とは、次の場合をいいます。
・期間の定めがなく雇用される場合
・雇用期間が1年以上である場合
・雇用期間が1年未満であるときでも次のいずれにも該当する場合を除き被保険者となります。
(1) 雇用契約書その他書面においてその契約が更新される旨又は更新される場合がある旨明示されていないこと
(2) 当該事業所において同様の雇用契約に基づき雇用されている者について更新等により1年以上雇用された実績がないこと
 
◎学生でないこと
大学、高等学校、専修大学のほか、各種学校(修業年限が1年以上の課程に限る)、各資格職の養成学校などの教育施設に在学する生徒又は学生は適用対象外とされます。ただし次に掲げる者は、被保険者となります。
・卒業見込証明書を有する者であって、卒業前に就職し、卒業後も引き続き当該事業に勤務する予定の者
・休学中の者
・大学の夜間学部及び高等学校の夜間等の定時制の課程の者
 
◎規模501人以上の企業が対象
今回は全ての企業が対象となる訳ではありません。2016年10月からは従業員数(現在の加入基準の社会保険被保険者数)501人以上の企業が対象とされます。
従業員数500人以下の企業は、平成31年9月30日までに検討が行われ、必要な対応が取られることになっていますので、今回対象とならない企業であっても今後の動向にご留意ください。

「同一労働同一賃金の動向・政府ガイドラインによる基本給の差容認」

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安倍政権により「仕事の内容が同じなら正社員も非正規社員も賃金を同じにする。」そうした「同一労働同一賃金」を目指すことを「ニッポン一億総活躍プラン」の柱の一つにするといいます。
関連する調査として、厚生労働省が直近に発表した「就業形態調査」によりますと、民間事業者に勤める労働者のうち非正規社員の占める割合が40.5%に達し、初めて4割の大台を超えました。4年前に実施した前回調査から1.8ポイント上昇しています。また、総務省の発表した「労働力調査」でも、非正規の割合は役員を除く雇用者全体の37.4%と国内のほぼ4割を占めているのがわかります。さらに賃金構造の調査では、非正規労働者の低賃金の実態が、正規労働者を100にした場合の非正規労働者の賃金額が63.9となり、統計を取り始めた2005年以降で最も高くなっています。こういった非正規労働者に対する格差是正の実現に向け、「不当な賃金格差」の事例を示すために政府が年内にもまとめるガイドラインの概要が判明致しました。

 

同一労働同一賃金ガイドラインの骨子
<合理的な理由があれば差を認める>
・職務内容に関連性が高い基本給
・勤続期間に応じた退職金、企業年金
 
<同様の取り扱いを求める>
・通勤手当
・社内食堂の利用
・病気休業

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同一労働同一賃金の実現に向け政府は、パート労働法・労働契約法・労働者派遣法の3法を改正し、2019年度の施行を目指しています。施行までの期間において、先んじて各企業への自主的な努力を促すためにガイドラインを策定します。特に「不当な賃金格差」の事例を示すために政府が年内にもまとめるガイドラインの概要として、通勤手当や病気による休業、社内食堂の利用などは正規社員と同じ取り扱いを求める一方、職務内容に関連性が高い基本給などは、合理的な理由があれば差を認めるとしているようです。ただし、ガイドラインは法的根拠が乏しいため、どこまで実効性が担保されるかは不透明な部分はあるようです。いずれにせよ法改正による本格的な導入まで相当時間がかかりそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
具体的な概要ですが、通勤手当や社内食堂の利用などは同じ職場で働く人にとって等しく必要なものとし、正規・非正規間で差を設けることを「不当」としています。厚生労働省によりますと、通勤手当は85.6%の正規労働者に支払われていますが、パート労働者に対しては65.1%にとどまるといいます。慶弔休暇も正規労働者の82.7%に対し、パートは42.2%しか認められておらずガイドラインでは、こうした格差を是正する方針です。
 
気になる基本給などは仕事の中身との関連性が強いため、経験や資格など合理的な理由があれば差を認める方針です。退職金や企業年金などの取り扱いについては、勤続期間が同じであれば非正規に正規と同様の扱いを求めることも検討するといいます。賃金の水準についても先日閣議決定されました「ニッポン1億総活躍プラン」において、「非正規労働者の賃金を正規労働者に対する約6割から欧州並みである8割程度の引き上げを目指す。」と宣言しています。

「マイナンバー制度の動向」

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マイナンバー制度の動向!!

2016年1月からマイナンバー制度の運用が開始されました。
現在マイナンバーは、その利用範囲がマイナンバー法において限定的に定められており、「社会保障・税及び災害対策に関する事務」でのみ利用できることとなっていますが、さらなる活用範囲を広げるために様々な活用方法を模索しているところでもあります。
同様に、マイナンバー制度始動におきましても、まだまだ実務上の運用方法が確立しているとはいいがたく、制度を進める上で生じる問題点に対する考え方を整理・模索しながら、実務上の改定がなされていくものと思われます。特にマイナンバー制度導入前に予定されていた実務上の考え方に対する変更・整理された中から抜粋したものを、最新の動向としてまとめました。
 

◎雇用保険の事業主の届け出義務の考え方

雇用保険手続について、制度開始の直前まで、個人番号をハローワークに届け出る法的根拠を、番号法に基づく「努力義務」としていた整理を「義務」に変更しています。
平成28年2月8日付の雇用保険業務等における社会保障・税番号制度への対応に係る考え方の整理によりますと、「事業主は、雇用保険法第7条、雇用継続給付に係る雇用保険法施行規則の規定に基づき、雇用保険被保険者資格取得届・資格喪失届、雇用継続給付の申請などの手続を、厚生労働大臣に対して行う義務があります。この場合、事業主は個人番号関係事務実施者として、番号法第14条第1項に基づき従業員から個人番号の提供を求めた上で、ハローワークに届出をしていただくこととなります。」とあり、直接事業主を事務実施者として義務付ける変更がなされました。よって、直近の方針として育児休業給付・高年齢尾用継続給付等一部の手続きについて事業主を代理人として扱うという考え方の整理が示されていましたが、平成28年2月16日以降は、事業主が代理人ではなく個人番号関係事務実施者として直接提出するよう整理されています。もちろんハローワークについても、本人又は他の個人番号利用事務等実施者(取得届等の提出を行う事業主を含む)に対し個人番号の提供を求めることができることとされています。また、やむを得ない理由のため事業主を経由して提出できない場合には、本人が届け出を行うことも可能としています。
 

◎マイナンバー制度導入による雇用保険業務の変容

平成29年7月より雇用保険業務については、他の行政機関等との間で情報連携を行うとともに国民の負担の軽減化を図るとしています。
・日本年金機構がハローワークとの間で情報連携を行ことにより老齢厚生年金と雇用保険との併給調整事務を効率化する。
・ハローワークが自治体との間で情報連携を行うことにより介護休業給付における対象家族の住民票等の添付書類の省略により事業主等の手続きの負担の軽減を行う。
・その他雇用保険適用・給付業務の適正化などを行うこととしています。
 

◎従業員から個人番号の提供を受けることができない場合

まずは、社会保障や税の決められた書類にマイナンバーを記載することは、法令で定められた義務であることを周知した上で提供を求め、それでも提供を受けられないときの対応
・提供を求めた記録等を保存するなどし、単なる義務違反でないことを明確にしておく。経過等の記録がなければ、個人番号の提供を受けていないのか、あるいは、提供を受けたのに紛失したのかが判別できないので、特定個人情報保護の観点からも、経過等の記録が必要です。ただし、マイナンバー記入欄を空白のまま提出しても、現在のところ個別にマイナンバーの届け出の督促を行う予定はないとのことです。
 

◎マイナンバー制度における税の分野の動向

厚生労働省内での問題やマイナンバーの国民への通知の遅れなどの理由で、特に税の分野において、当初の予定よりも実質的な運用のスケジュールが1年程度後ろ倒しになっていますが、実務上のポイントとして
・本人交付用源泉徴収票等にマイナンバーの記載がなくなりました。
・扶養控除等申告書などの申告書にマイナンバーの直接記載以外の方法が認められました。例えば、給与支払者と従業員との間での合意に基づき、従業員が扶養控除等申告書の余白に「マイナンバーについては給与支払者に提供済みのマイナンバーと相違ない」旨を記載したうえで、給与支払者において、すでに提供を受けている従業員等の個人番号を確認し、確認した旨を扶養控除等申告書に表示するのであれば、扶養控除等申告書の提出時に従業員等の個人番号の記載をしなくても差し支えないことを意味します。
・一度マイナンバーを正しく提出し、正しく保管している限り、すでに提出済みのナンバーと相違ないとしておけば扶養控除等申告書に毎年個人番号を提出する必要がなくなります。
・これにより保管についても、退職日の翌年1月10日より7年後となり、最初の1回目の提出分だけの廃棄でかまわないことを意味します。
 
システムとして動き始めたばかりですので、今後も短い間隔での実務上の考え方の変更・整理が行われることと思われます。動向には随時確認が必要です。

「賃金水準の見直しの留意点」

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安倍首相が成長戦略の第2弾として打ち出した一億総活躍社会。言い換えれば「女性と高齢者の潜在力」に着眼を置いた政策は、成長戦略の中核をなすもので、最近様々な法改正に関連する話題もよく耳にするところです。また、非正規労働者の賃金格差問題により「同一労働同一賃金」に向けての動きもあります。こういった影響もあり、この機会に女性・高齢者・中途採用者及び非正規労働者の賃金水準を見直す会社が増えているといいます。古くからある会社では、年功賃金は男性の定期採用者を中心に考えられており、女性や中途採用を軽んじている場合が多いようです。見直しの際、特に非正規労働者との「同一労働同一賃金」の考え方をどのように受け入れるかを、今後示されるであろう政府による指針などを参考に、時間をかけて慎重に検討することも必要になるでしょう。

 

[賃金水準の見直しのポイント]

①不利益変更にならないように留意

賃金の決め方については、地域別に定められている最低賃金額等に抵触しない限り金額や支払い制度については自由に決定することができるという考え方になっていますので、企業内の賃金水準を見直す場合においても、会社の都合に合わせて自由に決めればいいのですが、一番の注意点は、すでに制度として導入している賃金水準を変更する際に、変更内容が、以前の条件と比較して「不利益変更」の問題に抵触しないよう慎重にかつ計画的に進めることが大切です。言うまでもありませんが、長引く不況による企業自体の収益と支払い能力とのバランスも見直しの背景として重要ですが、労使の協力で得られる生産性の成果が、労働者に公正に配分されているかについて、できればすべてについて経営側で決定するのではなく、労使間で取り決めた配分方式のルールの上で検討することが望ましいとされています。
 

②問題点の確認

賃金水準を変更する際に、現状の賃金制度にどんな問題点があるのかをまず分析して実態を明らかにするために必ず事前に話し合う必要があるでしょう。
 

③ベースアップと定期昇給を明確に区別しているか?

賃金水準のアップは、べース・レート・アップにより可能となりますが、一方、定期昇給の場合、各人の年齢や経験の高まりを受けて上昇するものであって、賃金水準が上がったことにはならないので、賃金水準を見直すという場合には、定期昇給を見直しただけでは1円もあがらないという認識も必要ですね。要するに、労使間交渉の結果の賃上げから確認された定期昇給を引いた残りが、ベース・レート・アップとして決まるものであり、そのベース・レート・アップによって初任給改定や賃金テーブル改定を行うことになります。
 

④公平感のある賃金体系を整える

古い賃金テーブルを使っている場合、そのベースとなる賃金体系が整っているか、つまり名目だけでない実質としての賃金の公正さを保っているかが必要です。最低生計費を保障する部分と各人の仕事や能力を受けて決まる職能給や職務給とを分離して組み立てることが重要です。できれば、両者が混じった状態での総合決定給ではなく生涯を見据えての個別賃金を確立することが望まれます。基本給を決める際に、例えば職能給と年齢給とで構成する場合、金額的高さ等の構成割合を明確にし、さらに定期昇給の部分についても社内で公平感を与えるものかも大切です。
 

⑤諸手当はシンプルにする。

諸手当は必要最低限にかつシンプルにするのが望まれます。基本給以外の手当が多すぎるのも問題と考えられています。
 

⑥定期昇給の大きさ及びその仕組みは適切かどうか。

適切な考え方の例として、賃金体系のメインは職能給をベースにしながら、前半は能力主義賃金、後半は成果主義賃金で構成されることが望ましいとされますが、まず職能給は昇格昇給と習熟昇給とで構成すると仮定すれば、昇格昇給は、定期昇給に入らないと考え、習熟昇給は、その等級の上限賃金に達するまでは誰でも定期昇給と位置づけます。一方年齢給も誰もが適用される部分とみなして定期昇給とする。といった具合に自社の体系の中で何が定期昇給なのかを明確に認識しておくことが大切です。
 

⑦基幹賃金水準を考える。

ポイントとなる年齢は、30歳35歳の賃金です。一般的に今までのベース・アップ配分と初任給決定の関係から初任給と30歳前後の在籍者賃金との間に格差論として中だるみの現象が生じているといわれます。この年齢要素の賃金が低いとキャリア形成だけでなく世帯形成の面でも不十分なものとなりがちで、労使双方にとって好ましくないと考えられています。ただ、年齢の要素について、今後は高齢者の雇用継続の義務付けも強化されていくことを念頭に入れた制度作りが望まれます。
 

⑧賃金制度を左右する評価・育成・昇進などを見直す。

いくら個別賃金がしっかりしていても、評価は適切な仕組みと運用がされているのか、評価の結果はフィードバックされているかどうか、つまり人間比較の相対考課ではない、一人一人を見つめ絶対考課が確立されているか等を考慮した見直しを行うことが望ましいとされます。
 

⑨同一労働同一賃金の観点

今年から政府により行われる「同一労働同一賃金」実現化の検討会で、どういう場合に正社員との格差が不合理なのかを示した指針を取りまとめ、企業の取り組みを促していく方針を打ち出しています。指針では、非正規で働く人には支払われないことが多い通勤費や賞与などの支給の在り方等、正社員との賃金差が明らかに不合理な例などを提示すると共に合理的に賃金差が認められるとする具体例を示すガイドラインも作成し、労働契約法・パートタイム労働法・労働者派遣法の改正も視野に入れての実現化を予定しているだけに、賃金水準の見直しにおける格差問題には、十分に留意する必要があります。