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一般社団法人日本人材育成協会

JAPAN PERSONNEL DEVELOPMENT ASSOCIATION

労災死の4割超が高齢者に2021年360人「危険できつい」仕事担うシニアたち政府の安全対策後手!(令和4年6月16日.東京新聞)

2021年に労働災害で亡くなった60歳以上の高齢者が360人に達し、労災死亡者全体(831人)の43・3%を占めたことが、本紙の調べで分かりました。過去最高の比率で4割を超えたのは初めてです。工事現場など若い人が敬遠しがちな危険できつい仕事を担う高齢者が増えている現状と、安全対策の遅れが鮮明になりました。

●厚生労働省が毎月公表する労働災害発生状況(速報)を基に東京新聞が集計しました。労災死に占める高齢者の比率は2001年は22・7%でしたが、約2020年でほぼ2倍に上昇しました。労災死全体は減少傾向ですが、高齢者では最近は増加が顕著となっています。 産業別で2021年に高齢者の労災死が最も多かったのは建設業で、前年比25人増の112人。足場組み立て作業中の落下など墜落事故が多発しました。労災死亡中で高齢者比率が高かった業種をみますと警備では、26人のうち約7割(18人)が60歳以上。「工事現場の誘導中に突っ込んできた車にはねられた」(神奈川県・60代)などです。清掃やハイヤー・タクシーも高齢者比率が高く、社会福祉施設でも22人が死亡。老人ホームでヘルパーなどで働いていて新型コロナウイルスに感染、亡くなった高齢労働者もいました。

●高齢労災死増加の背景には、高齢者人口の増加に加え2013年度以降の厚生年金の支給開始年齢の段階的引き上げなどを受け生活費のため働く人が増えた実態があります。2000年時点で870万人でした働く高齢者は昨年1430万人に増加。就業者の21%を占めます。ただ高齢者の就職は難しく、「危険」「きつい」とされる仕事も多い業種に集中する傾向があります。建設業の26%、タクシーなど道路旅客運送業では48%が高齢労働者となります。コロナ禍で小売りなどサービス業の求人が減ったことも危険な職場で働く高齢者が増える要因です。今年4月からは年金支給額自体も現役世代の賃金低迷で0・4%減少。物価も上昇し、厳しい条件で働く高齢者はさらに増えそうです。労働問題に詳しい龍谷大学の脇田滋名誉教授は「政府は高齢者に働き続けるよう促しながら安全管理規制は緩いままだ。実態調査と抜本的な対策が必要」と話しています。
2022年06月16日 09:51