焼津市立総合病院に労基署が是正勧告 ! (令和6年10月3日.朝日新聞)
「医師に協定超える休日労働焼津市立総合病院が医師に労使協定(36協定)を超える休日労働をさせていたとして、島田労働基準監督署が是正勧告をしていたことがわかった。
病院は労務管理が不十分だったとして、紙で管理していた出退勤記録を2月から電子化し、時間外労働など就業情報を全職員がいつでも確認できるようにするなどの改善報告を労基署に出したという。
是正勧告が出たのは昨年11月。医師の労使協定では「1カ月の休日労働は3日以内」としていたが、昨年4月以降、これを超えて働かせていたケースがあったという。
病院によると、このほかに、救急外来での宿直勤務はあらかじめ労基署の許可を取れば「労働時間ではない」とみなされるが、法令で定めた基準を超えて働かせている可能性があると指摘を受けた。病院は「職種や時間帯などで労働実態が異なる」としたうえで「詳しく調べて必要な対応を検討する」と労基署に伝えたという。」
焼津市立総合病院に対する是正勧告に関するコメント
今回、焼津市立総合病院が労働基準監督署(労基署)から是正勧告を受けた問題は、医療機関の労務管理がいかに複雑かつ重要であるかを浮き彫りにしています。特に医師という高度専門職の労働条件については、患者の命を守るという責任と、労働者としての権利のバランスをどのように取るべきかが常に問われています。本件では、「36協定」という労働基準法に基づく協定を超えた休日労働が確認されており、病院側の労務管理の不備が指摘されました。この問題は、医療の質と医師の労働環境の健全さの両立という課題を再認識させられます。
医師の働き方改革の現状と課題
医師の働き方改革は、2024年4月から本格的に開始されていますが、本件はその改革の難しさを物語っています。医師の業務は計画的に管理することが難しく、救急対応や緊急手術など不規則な勤務が避けられないという現実があります。医療従事者、とりわけ医師の過重労働は、単に本人の健康に影響を与えるだけでなく、医療の安全性にも直結します。過労による判断ミスや集中力の低下が患者の安全にリスクを及ぼす可能性は否定できません。労働基準法はすべての労働者に等しく適用されますが、医療現場においてその運用が適切に行われていない場合、法制度の見直しや新たな枠組みの検討が必要となります。
病院の改善策の評価
病院は今回の是正勧告を受けて、労務管理の改善に取り組む姿勢を示しており、紙媒体で管理していた出退勤記録を電子化するなどの対策を講じたとされています。電子化によって職員が自身の労働時間を可視化できることは、透明性の向上につながる重要な一歩です。ただし、労務管理システムの導入はあくまで手段であり、実効性を高めるためには病院の運用体制の整備も不可欠です。病院が指摘するように、職種や時間帯ごとに労働実態が異なる場合、柔軟な労務管理の仕組みが求められます。特に宿直勤務などの特殊な勤務形態については、法令に従った運用を徹底する必要があり、あらかじめ労基署の許可を取得するだけでなく、実態に即した勤務条件の調整が重要です。
是正勧告の意義と今後の展望
労基署による是正勧告は、単なる指摘にとどまらず、医療機関が抱える根本的な問題に向き合う契機となるべきです。病院は「必要な対応を検討する」と表明していますが、単なる法令遵守の域を超え、働きやすい職場環境を構築するための具体的なアクションが求められます。医師の労働環境を改善することは、ひいては地域医療の質の向上にもつながるでしょう。また、今回のケースは他の医療機関にとっても貴重な教訓となり得ます。医療従事者の過労問題は全国的な課題であり、各地の医療機関が一体となって取り組むべきテーマです。
結論
焼津市立総合病院に対する是正勧告は、労務管理の改善だけでなく、医師の働き方改革の一環として捉えるべき重要な問題です。労基署の指摘を受けて病院が迅速に対応することは評価されるべきですが、真に持続可能な医療現場を構築するためには、さらなる取り組みが必要です。今後、医療の安全と医師の労働環境が両立する仕組みを確立することが、日本全体の医療改革においても不可欠な課題と言えるでしょう。
出典:朝日新聞