未払い賃金「56円」求め、JR西日本と運転士が裁判…回送ミスで給料「1分間分」カット!(令和3年11月8日.讀賣新聞)
JR西日本岡山支社の男性運転士が、1分間分の未払い賃金「56円」の支払いを求め、岡山地裁でJR西と訴訟で争っています。回送列車の入庫作業の1分遅れを理由にした賃金カットに対し、運転士側は「ダイヤへの影響はなく、会社に損害も発生しておらず、不当だ」と撤回を求めました。JR西は「遅れた1分間は働いておらず、カットは妥当」と真っ向から対立しています。●訴状などによりますと、男性運転士は2020年6月18日朝、JR岡山駅(岡山市北区)で回送列車を車庫まで移動させる作業を担当。しかし列車の到着を待つホームを間違え、駅まで運転してきた運転士との引き継ぎ作業の開始が指定時刻より2分遅れました。その結果、発車が1分遅れ、入庫完了も1分遅れました。これを受け、JR西は当初、「乗り継ぎが遅れた2分間は労働実態がない」として、男性運転士の7月分の月額給与の2分間分85円をカット。運転士は岡山労働基準監督署に相談し、JR西は労基署から是正勧告を受けましたが、全面的には譲らず、最終的に発車が遅れた1分間分をカットしました。男性運転士はこれを不当とし、今年3月、カットされた43円と、作業のずれ込みで生じた割り増し分の残業代13円に加え、精神的苦痛を受けた慰謝料など計約220万円の支払いを求め、JR西を相手に岡山地裁に提訴。10月までに2回の口頭弁論が開かれています。
●訴訟でJR西側は、賃金カットの理由について、遅刻や欠勤によるカットと同様に「ノーワーク・ノーペイの原則」を適用したと主張しています。男性運転士が誤ったホームで待ち、1分間遅れた間は、会社の指示したことを行っておらず、JR西との雇用契約は「履行」されていないので、賃金を支払う必要はないという考え方です。鉄道乗務員には分単位、秒単位の時刻の厳守が求められることも、この原則を適用した理由に挙げ、JR西は訴訟で「この運転士に限らず、同様のカットを実施している」と主張。讀賣新聞の取材に対しては「係争中の事案で詳細は差し控える」と回答しています。
●一方、原告側は、男性運転士は既に出勤、点呼を終えており、問題の1分間も「労務中」だったとし、賃金が支払われるべきだと主張しています。さらに、1分間の遅れは故意ではなくミスによるものであること、回送列車だったため他の列車の運行に全く影響がなかったことも強調。一般的に、企業で業務中のささいなミスを「契約不履行」とするのは妥当ではないとして、「賃金カットをヒューマンエラーに対する『制裁』として利用している」と、JR西を批判しています。
2021年11月08日 09:48