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一般社団法人日本人材育成協会

JAPAN PERSONNEL DEVELOPMENT ASSOCIATION

パナソニックで工場社員自殺持ち帰り残業含む長時間労働、責任認め和解!(令和3年12月7日.朝日新聞)

電機大手パナソニックで働いていた富山県の男性(当時43)が2019年に自殺しました。同社は、過大な仕事量や「持ち帰り残業」を含む長時間労働を正さずにいた結果、男性がうつ病を発症して死に至ったとして遺族に謝罪し、解決金を支払うことなどで令和3年12月6日、和解が成立しました。

●労働基準監督署は自宅に持ち帰った仕事を会社の指示とは認めませんでしたが、同社は独自調査で会社の責任を認めました。企業が裁判を経ず、持ち帰り残業を労働時間と認めるのは異例といいます。遺族や代理人の松丸正弁護士(大阪弁護士会)によりますと、亡くなった男性は死亡当時、パナソニックの半導体事業を担うインダストリアルソリューションズ社の富山工場(富山県砺波市)で技術部の課長代理を務めていました。男性は2003年から工場で派遣社員として勤務し、2009年に正社員になりました。2019年4月に製造部から技術部に異動し、係長から課長代理に昇格。仕事内容が大きく変わって業務量も増え、職場では仕事を終わらせることができず、業務用パソコンを自宅に持ち帰って仕事をしていたといいます。男性は2019年10月、自宅で死亡しました。砺波労基署(砺波市)は2021年3月、遺族側の請求に基づき、配置転換や仕事内容の変化・増大により男性が強い精神的負荷を受け、うつ病を発症したとして労災を認定。一方、持ち帰り残業について「会社からの業務命令によるものではなく、黙示の指示があったとする実態も認められない」などと指摘し、労働時間に該当しないと判断しました。

●厚生労働省は2017年、労働時間の認定にあたっては、労働者の行為が客観的にみて会社や上司の指揮命令下にあったといえるかどうかなどで判断するとしたガイドラインを作りました。持ち帰り残業について同省は「仕事を持ち帰って行うことを義務付けられていたか、余儀なくされていたことが確認された場合に労働時間と評価する」と説明しています。パナソニックは、男性が自宅に持ち帰っていた業務用パソコンのログなどを独自に調査。自宅での作業についても、業務上、余儀なくされていたものだったと認定し、労基署の判断よりも踏み込んだ形で会社の責任を認めました。過大な仕事内容・仕事量に加え、持ち帰り残業を含む長時間労働を是正するなどの安全配慮義務を会社が怠った結果、男性が亡くなったと認め、遺族に謝罪しました。同社は和解にあたり、持ち帰り残業を含む労働時間の正確な把握のほか、業務量の適正化や社員間でのコミュニケーションの見直し、研修・面談などの対策をとる考えを示しました。遺族側代理人の松丸弁護士は和解内容を「過労死問題に対する社会の厳しい視線を反映した判断といえる」と評価。「国が採用している労働時間の考え方が、働く現場の実態を反映しきれていないことが浮き彫りになりました。当事者企業の対応が国の対応を追い越したケースだ」と話しています。パナソニックでは2016年にも砺波市の工場で当時40代の男性社員が自殺し、長時間労働が原因として労災認定されています。同社は2018年、労使協定を超える違法な時間外労働をさせたとする労働基準法違反の罪で略式起訴されました。同社は取材に「亡くなられた社員に謹んで哀悼の意を表すると共に、ご遺族の皆様に衷心よりおわび申し上げます。弊社として再発防止に向けた取り組みを徹底して推進してまいります」とするコメントを出しました。
2021年12月07日 09:29