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一般社団法人日本人材育成協会

JAPAN PERSONNEL DEVELOPMENT ASSOCIATION

コロナ禍「心折れる」公務員 過労死ライン超え勤務!(令和4年3月3日.産経新聞)

2年以上にわたる新型コロナウイルス禍で、感染者対応に加え、ワクチン接種や給付金支給などの業務に携わる自治体職員の過重労働が続いています。災害時を想定した労働基準法の例外規定を根拠に、超過勤務が常態化。過労死ラインを超え、体調不良でも休めないケースもあり、職員の疲弊は限界に達しています。

●「夜、寝る前も頭の中で電話の音が鳴り響いているんです」。大阪府の保健所で感染者の発生届に関わる業務を行う50代男性は、感染流行のたびに職場の電話が鳴りやまない日々を過ごすうち、就寝時に幻聴に悩まされるようになったといいます。昨秋の人間ドックでは胃潰瘍の痕が見つかりましたが、気づく余裕もないほど仕事に忙殺されていました。同僚の女性保健師からは深夜に帰宅し、小学生の子供が自分の服にくるまって寝ているのを見て、思わず涙を流したと聞きました。朝早く出勤し、夜遅く帰る生活が続き、子供が不登校になっていたことに気づかなかった別の職員もいました。人員不足を訴え続け、他部署から応援がくるようになりましたが、第6波を迎え、絶対数が足らない状況は変わらず、業務の簡略化や職員の大幅増員など抜本的な改善を望まれます。「このままではずっと苦しめられるのではないか。2年たっても先が見えず、心が折れる」と男性は漏らしています。

●東京23区内でワクチン接種に関する情報発信や住民からの問い合わせに対応する30代男性は、高齢者向けの接種が始まった昨春、残業時間が過労死ライン(月80時間)の2倍となる160時間に及んだといいます。ワクチンの供給量が限られる中、接種を受けられない住民の不満が噴出し、罵声を浴びせられるのは日常茶飯事でした。ゴールデンウイークも連日出勤し、集中力が落ちてミスが増えました。周囲から顔色が悪いと心配され、「過労死が頭をよぎり、いつ死んでもおかしくないと思った」と男性は振り返ります。半年ほど月100時間を超える残業が続き、その後は60時間まで下がりましたが、最近は3回目接種に関わる業務が降りかかり、再び残業が増えるのは避けられない状況です。コロナ関連の給付金を担当する職員も激務が続いています。都内自治体の60代男性は定年退職後に復職した嘱託職員ですが、残業や休日出勤を余儀なくされています。岸田政権の肝煎りだった子育て世帯への10万円給付では、支給方法の変更や、給付日の前倒しなど、政府方針が二転三転し、現場はその都度対応に追われました。低所得世帯や一人親世帯などにも対象が広がり、自治体独自のものも含め、5種類の給付金に同時並行での対応が求められているのが現状です。

●「過労死弁護団全国連絡会議」代表幹事の松丸正弁護士は「民間企業は捜査権限のある労働基準監督署が監督していますが、自治体の人事委員会は是正勧告を行うのみで、地方公務員の勤務時間の適正把握は極めて遅れている」と指摘しています。「災害等による臨時の必要がある場合」に、法定を超えた時間外労働や休日労働が可能と定めた労基法33条3項が、抜け道に利用されているとする松丸氏は「もはや臨時ではなく、超過勤務が恒常化しています。過労死ラインを超え続けているのは違法状態ではないか」と注文を付けました。保健所などで新型コロナウイルス対応に当たる職員の2割以上が過労死ラインの月80時間を超える時間外労働を経験していたことが、自治労のアンケートで分かりました。鬱的な症状があった人も3割以上に上り、蔓延する過重労働の深刻さが鮮明になりました。

●調査は40都道府県の保健所や保健センターなどの職員に昨年1年間の労働実態を尋ね、1771人が回答。411人(23%)が月80時間以上の時間外労働をしており、月200時間以上も17人(1%)いました。流行「第5波」のピークだった昨年8月に最も時間外労働が多かったとの回答が目立ちました。感染拡大の前後で増えた業務は電話対応が最も多く、事務作業、積極的疫学調査と続きました。「この1年間で鬱的症状があったか」との質問には35・5%があったと回答。コロナ対応に当たる職員ほど高い傾向がみられ、月80時間以上の時間外労働を経験した職員に限ると半数以上があったとしています。自由記述欄には「仕事が遅い」などの暴言やクレームに関する被害報告があり、「患者の家族や近隣者から偏見を含む言動を受けた」との訴えもありました。
2022年03月03日 09:46