男女の賃金格差 情報開示をテコに是正図れ!(令和4年6月21日.讀賣新聞)
近年、「女性活躍の推進」は国の労働政策の柱となっています。単なるスローガンに終わらせないことが大切です。政府は、男女別の賃金格差の情報開示を企業に義務づけることを決めました。「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」に盛り込みました。関係する省令を改正し、今夏からの実施を目指しています。対象は、従業員301人以上を雇っている全国約1万8000社となる見通しです。公開方法を含め具体的な制度設計は、厚生労働省の労働政策審議会で決めます。●労働力人口が減る中、女性の働き手を確保することは重要です。政府は2015年、女性活躍推進法を制定し、女性の登用を進める行動計画の策定を企業に求めました。今回の取り組みで、女性の処遇改善を促す狙いは理解できます。男女の賃金格差の是正は、連合が強く求めていたものです。企業側にとっても、性別にかかわりなく活躍できる職場だと示すことができれば、企業価値の向上につながります。経済協力開発機構(OECD)の調査によりますと、英国、ドイツなど欧州の主な国では、女性の賃金は男性の9割程度なのに対し、日本は77・5%にとどまっています。管理職が少ないことや、勤続年数が短いことが背景にあります。ただ、男女の賃金格差が生じる事情は、企業によって様々となっています。
●男性の多い企業が女性の新卒採用を積極的に進めた場合、勤続年数の短い女性が増えます。一時的に全体としては、男女の賃金の差が広がるのはやむを得ません。飲食業など非正規雇用で働く女性が多い業種では、賃金差が開きがちです。一律に数値の公表を義務付けるだけでは、企業によっては不利益になりかねません。政府は、企業側の実情に配慮し、格差が生じている理由や、是正に向けた取り組みについて説明できる手立てを講じるといいます。無論、非正規労働者の処遇改善も促し続けねばなりません。政府はかつて上場企業に対し、有価証券報告書で賃金格差を公表するよう義務付けていました。企業の事務負担を軽減する観点から、1999年に廃止しました。国は今回、再び有価証券報告書への記載を求める方向で検討しています。女性の管理職の割合などがわかる厚労省の「女性の活躍推進企業データベース」には、2万2000社が登録しています。こうした仕組みなどを活用し、求職者が情報を入手しやすくなることが望まれます。
2022年06月21日 09:47