変形労働時間制は「無効」マクドナルド訴訟、名古屋地裁判決!(令和4年10月28日.毎日新聞)
日本マクドナルド元社員の男性=名古屋市=が、成績不振の従業員に対する業績改善計画で達成困難な目標を課され退職を強要されたとして、同社に解雇無効や慰謝料などを求めた訴訟の判決で、名古屋地裁(五十嵐章裕裁判長)は令和4年10月26日、未払い賃金約61万円の支払いを同社に命じました。解雇無効などの請求は棄却しましたが、全国の店舗社員に適用されている「変形労働時間制」を無効と判断しました。●元社員は、1カ月単位で勤務シフトが変わる同制度で働いていました。会社側は「全店舗(直営864店)に共通するシフトを設定することは不可能。各店舗のシフトは就業規則に準じている」と主張しましたが、判決は「就業規則で定めていない店舗独自の勤務シフトは、労働基準法の要件を満たしていない」と退け、事業規模によって例外が認められるものではないとしました。同制度の無効に伴い、時間外労働に対する割増賃金の未払いを認定。休憩時間とされていた移動時間も労働時間に含まれると認め、2017年10月~2919年2月の未払い額を算出しました。一方、注文から提供まで30秒以内など、原告側が非現実的な目標を課されたと訴えていた業績改善計画については、「達成困難な目標が設定されたとはいえない」と指摘。退職に関しても「強迫による意思表示の取り消しではなく有効な合意をした」としました。
●同計画は、主に外資系企業で「PIP(パフォーマンス・インプルーブメント・プラン)」などと呼ばれる制度。達成困難な目標を課して退職勧奨や解雇の理由とするケースもあります。原告代理人の杉山清弁護士は「変形労働が無効と明らかになったことは画期的で、全国の店舗社員へ波及する問題だ」とする一方、「PIPの問題が認められず、今後については原告と相談したい」と話しました。訴状によりますと、男性は2016年11月、過労による急性心筋梗塞で倒れました。心臓手術を受け、医師は意見書に「6カ月は過労を避けて」と記しましたが、こうした記述の無い意見書を会社に再提出させられたと主張。連日の深夜勤務などもあり2017年8月に再手術しましたが、翌月復職を求められました。その後も、PIPの目標未達成を理由に退職同意書への署名を求められるなどして、2019年4月で退職とされたといいます。日本マクドナルドの担当者は取材に「判決の詳細をまだ確認できておらずコメントできない」と答えています。
2022年10月28日 12:38