日本製鉄社員「過労自殺」残業急増、上司叱責も 労基署認定!(令和4年11月21日.毎日新聞)
国内最大手の鉄鋼メーカー「日本製鉄」(本社・東京都)の社員だった水谷翔紀(しょうき)さん(当時28歳)が2020年2月に自殺したのは、残業時間の急増と上司の叱責による複合的な要因でうつ病を発症したためだとして、半田労働基準監督署(愛知県半田市)が労災認定していたことが、関係者への取材で判明しました。未経験の修繕業務を命じられて業務が増えたほか、上司に何度も責められて疲弊していました。遺族は今後、日本製鉄に損害賠償を求める方針です。●認定は2022年4月20日付。遺族側代理人の立野嘉英(よしひで)弁護士(大阪弁護士会)によりますと、水谷さんは2010年に技術職で入社し、名古屋製鉄所(愛知県東海市)で施設管理を担当していました。2019年10月、発電設備の定期修繕を1人で初めて任されました。3カ月後には別の大型発電設備の修繕も担うようになり、残業が増えました。時間外労働は月76時間で、その前月に比べて3倍に跳ね上がっていました。主な業務内容は修繕工事を安全に実施するための準備や検査でしたが、2020年2月の工期が迫る中、現場では作業が思うように進んでいませんでした。水谷さんは短期間に計3回、同じ上司から「何を考えているんだ」などと叱責されていました。2月6日朝、社員寮の駐車場で倒れている水谷さんが見つかりました。この直前に9階の自室ベランダから転落したとみられ、搬送先で亡くなりました。寮の自室には遺書が残されていました。
●水谷さんは母親に「仕事がきつい。会社を辞めたい」と漏らしていたほか、1月中旬以降は交際相手に無料通信アプリ「LINE(ライン)」で仕事の悩みや不眠を訴えるメッセージを送信。「上司からボロカス言われた」「心身共に疲れた」などと記されていました。遺族は2021年10月に労災を申請しました。半田労基署は、水谷さんが2020年2月上旬にうつ病を発症していたと認定しました。発電設備の修繕はミスの許されない緊張感を伴う業務だったとし、残業時間が3倍に急増したことで心理的な負荷がよりかかったと指摘。亡くなる前日も含めて近接した時期に上司による叱責も相次ぎ、自殺につながったと判断しました。日本製鉄は取材に「個人情報に関わるため、コメントを差し控える」と回答しています。
2022年11月21日 09:12