TOP

一般社団法人日本人材育成協会

JAPAN PERSONNEL DEVELOPMENT ASSOCIATION

トラック運転手、疲労満載…脳・心疾患での労災認定は全労働者の3割!(令和4年12月26日.讀賣新聞)

トラック運転手らの長時間労働が常態化している。2021年度には脳や心臓疾患で労災認定を受けた全労働者の3割を占め、厚生労働省は、運転手の労働基準を25年ぶりに改正し、長時間労働の是正策を強化しました。ただ、賃金が低く抑えられているという実態もあり、専門家は「労働環境を変えないと物流を維持できない」と警鐘を鳴らしています。

●厚生労働省によりますと、2021年度に国内で企業や官公庁などに雇用されている労働者は6013万人で、脳・心臓疾患での労災認定は172件ありました。業種別の内訳でみますと、トラック運転手ら190万人が従事する「道路貨物運送業」が最多の56件で全体の32・5%を占め、雇用者数に対する認定の割合は、全業種平均の10・3倍となりました。比較のできる2009年度以降、この業種は常に最多となっています。背景には、トラック運転手らの過酷な労働環境があります。長距離運行が多い大型トラックの運転手の労働時間は、全産業平均(175時間)より2割長い月212時間です。過酷な労働環境を敬遠して新規就労者は少なく、平均年齢は50歳に近くなっています。こうした状況を改善するため、厚労省は、トラック運転手らの労働基準を定めた告示を改めました。改正は1997年以来。2024年4月から適用される新基準では、月の拘束時間を9時間減の原則284時間とし、終業から次の始業までの間隔(勤務間インターバル)も延ばします。違反が確認されれば、国土交通省が事業者に対し、車両使用停止などの行政処分を行います。

●一方、規制が強化されても、環境改善につながるかは不透明ともいいます。都内の運送会社幹部は「運転手の労働環境改善には、荷主の意識改革も必要だ」と指摘します。長時間拘束の背景には、荷主の元での積み下ろしの順番待ちが長時間に及んでいるという実態があるからです。1990年に運送業が免許制から許可制に規制緩和されてから事業者数が増え、業界は過当競争に陥っています。この幹部は「運転手を守るために荷主へ環境改善を訴えれば、他の業者に乗り換えられかねない」と打ち明けます。荷主から過積載を求められるケースもあり、厚労省は今後、企業に立ち入って調査を行う労働基準監督署を通じて情報を集め、荷主側に改善を働きかけています。立教大の首藤若菜教授(労使関係論)は「運転手の拘束時間の削減と賃上げは急務ですが、そのためには運送料の値上げは避けられないといいます。輸送費が上がることで物の値段にも影響が及ぶかもしれませんが、流通を止めないためには、荷主や消費者も負担を理解する必要がある」と指摘しています。
2022年12月26日 09:19