雇用調整助成金コロナ特例、3月末ですべて終了 厚労省!(令和5年3月3日.日経新聞)
厚生労働省は、従業員の休業手当を払う企業を支援する雇用調整助成金で、新型コロナウイルス禍で設けた特例を3月末にすべて終了することを正式に決めました。●給額の上乗せに続き、支給要件の緩和も終える。支給額が6兆円を超え、約3年と長引いた雇用の下支え策は、労働力の円滑な移動を阻んだと指摘されます。副作用を含めた検証が欠かせません。同日に開いた労働政策審議会(厚労相の諮問機関)分科会に特例の終了を諮り、了承されました。3月中に省令を改正し、4月からは通常の支給要件に戻します。支給対象かどうかを決める売上高の落ち込みに関し、特例として一部でコロナ禍前との比較を認めるなどしていたのを改め、前年水準との比較とします。雇調金は一時、1人あたりの1日の支給上限額を1万5000円まで引き上げていました。すでに2月から通常の8355円に戻しています。雇用保険の被保険者以外の労働者を助成対象としていた特例も3月末で終えます。政府はコロナ禍による失業の増加を抑えるため、2020年に雇調金の特例を設けて、雇用を維持する企業への支援を拡大しました。その後の完全失業率は2〜3%程度で推移しています。厚労省は雇調金などにより、20年4〜10月の完全失業率を2.6ポイント分抑制できたと試算しています。
●労働政策研究・研修機構によりますと、米国の失業率は一時14%程度まで上がり、英国やフランスも5%を超えました。日本は失業率が5%台に達したリーマン・ショック時と比べても、雇用への打撃を抑えることができました。一方、雇調金の支給額上乗せや支給要件の緩和が長引いたことで副作用も生じました。企業が雇調金を支えに従業員を抱え込む「雇用保蔵」が起き、情報通信などのデジタル分野や介護、医療といったサービス需要が拡大する産業への人材移動を阻害したと指摘されます。米国と英国はコロナ禍に対応した特別な雇用支援策を2021年中に終了しています。欧州では労働者による新たなスキル取得の支援を充実させ、労働力の円滑な移動や産業の新陳代謝に成功している国も増えています。コロナ禍では企業の雇用維持支援に重点を置く日本の政策の問題点も浮き彫りになりました。財源難も深刻です。令和5年2月24日時点で支給決定件数は770万件超、支給決定額は6兆3000億円を超えました。本来の雇調金向けの財源だけでは足りず、失業等給付のための積立金からの借り入れや一般会計からの繰り入れも余儀なくされています。
2023年03月03日 09:33