定年後の再雇用 賃金の75%減は違法!(平成30年4月2日.毎日新聞)
定年後の再雇用契約を巡り、賃金の75%カットを提示され退職した元従業員の女性が、勤めていた食品会社に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(木沢克之裁判長)が原告、会社双方の上告を不受理とする決定を出しました。定年後の極端な労働条件悪化は、65歳までの継続雇用を義務付けた高年齢者雇用安定法の趣旨に反するとして、会社に慰謝料100万円を支払うよう命じた2審・福岡高裁判決が確定しました。決定は4月1日付。
●昨年9月の福岡高裁判決によりますと、北九州市の食品会社で正社員として働いていた山本真由美さん(63)は15年3月末に60歳で定年を迎えた際、パート勤務で定年前の賃金の約25%とする労働条件を提示されました。山本さんはフルタイム勤務を希望したため再雇用契約は合意に至らず、退職を余儀なくされました。1審・福岡地裁小倉支部判決(2016年10月)は、「賃金の引き下げは業務が減少したためで合理性がある」とする会社側の主張を支持。これに対し、福岡高裁は再雇用の際の労働条件について「定年の前後で継続性・連続性があることが原則」との解釈を示したうえで、収入が75%も減る労働条件の提示は「継続雇用制度の導入の趣旨に反し、違法性がある」と判断しました。
●一方、山本さんが損害賠償とは別に求めていた従業員としての地位確認については、1、2審とも「再雇用に至っていないので契約上の権利を有していない」として退けました。被告側弁護士は取材に「労働条件の提示に正当性があると主張しましたが不法行為と認定されたことは残念な結果」とコメントしました。労働問題に詳しい花垣存彦(ありひこ)弁護士(第二東京弁護士会)の話では、定年後の再雇用の労働条件を考える上で大変重要であり画期的な判決となります。高年齢者雇用安定法は労働条件の取り決めに具体的な決まりがないので、不当に賃金を引き下げれば訴訟で負けるという例となり社会的影響は少なくありません。「定年前との継続性・連続性が一定程度確保される」というキーワードが今後、労働条件を取り決める際の一つの指針になることが期待されます。