視覚障がい者にパワハラか 自殺未遂で重い後遺症、労災申請!(平成30年5月10日.沖縄タイムス)
女性は遺伝子疾患である先天性白皮症(アルビノ)。髪や皮膚の色が白く、紫外線から肌を守る免疫がありません。生まれつきの弱視。外見などからいじめを受け、20代からうつ病の治療も受けていました。申立書などによりますと女性は2014年9月、直射日光に当たらず安全に通勤できると「完全送迎」をうたう同事業所に入所し、編み物製品作りなどに携わりました。
●昨年8月、「会社の方針が変わった」として2カ月後の送迎中止を突然告げられました。9月、事業所員や主治医を交えて開かれた担当者会議の席で、女性が送迎が中止された場合の通所の困難を訴えた上で、代替案を提案したが聞き入れられず、代表者やサービス管理責任者から「あなたにさせる仕事がない」「来ても仕事がないのに給料をもらうのはおかしいでしょ」と、暗に退職を強要する発言をされたといいます。女性は追い詰められ、会議後、睡眠薬を多量服用して昏睡(こんすい)状態に陥りました。独り暮らしのため発見されたのは24時間後で、筋細胞が破壊される横紋筋融解症になりました。このほか、弱視ではさみが使えない女性に対して「裁ちばさみも使えないので縫製はできない」など差別的な発言をしました。事業所は、女性が名誉回復のため求めた謝罪にいったん合意したが履行しませんでした。当時の代表者やサービス管理責任者は退職しています。
●働く障がい者を支える就労継続支援A型事業所であったとされるパワハラ。退職を強要されたと訴え、労災申請した女性(44)は「仲間と努力を重ね、(事業所に)愛着を感じていた。辞めたいと思ったことはなかった。いらなくなったら簡単に捨てるのか」と悔しさをにじませています。識者は利益を優先し、福祉が置き去りになった可能性を指摘します。自殺未遂後、女性の生活は一変した。それまでサングラスや手袋で日光対策をし、白杖(じょう)を持てば、バスやモノレールに乗って自由に外出できました。しかし下肢に重い障がいが残り、車いす生活となり、付き添いなしでは外出できなくなりました。女性がうつ病の治療を受ける主治医は、提出した意見書で「突然解雇をにおわせるような態度をとられることは大きなストレスで、死にたくなるほどの絶望感を持ってしまうことも十分ありうる」と述べました。女性は、事業所が具体的な売り上げ目標額をたえず示し、「ここは会社です」と強調していたと振り返ります。代理人は「しっかりした福祉サービスの提供より、利潤を優先させた結果ではないか」といぶかっています。
● A型事業所を巡っては、補助金頼みで仕事の実態が不透明な事業所がみられたことから、国が昨年4月、給付金から利用者の賃金を支払うことを禁じ、収益で賄うよう促しました。この影響もあって、全国のA型事業所で、経営悪化による廃業や障がい者の大量解雇が相次いでいます。障がい者福祉に詳しい沖縄大の島村聡准教授は「送迎などの手間が掛からず出席率の高い利用者を事業所が選ぶようになったのでは」と指摘。「経営のプラス、マイナスのつじつまを合わせるため、弱い人を排除するようなことがあれば、それは雇用現場における障がい者の『虐待』に他ならない」とくぎを刺しています。