長崎地裁・労働審判を口止め 裁判官ら、雇い止め男性に!(平成30年6月19日.毎日新聞)
長崎県諫早市の男性(57)が不当に雇い止めされたとして長崎地裁に申し立てた労働審判で、裁判官などで構成する労働審判委員会が2月、会社に解決金を支払わせる一方で、解決内容を「口外しない」よう男性と会社に約束させる審判を出していたことが分かりました。口外禁止の条件を拒否していた男性は「会社の不当性が認められたのに口外できないのは、憲法の表現や良心の自由に反する」などとして、国家賠償を求め長崎地裁に近く提訴します。
●男性の代理人によりますと、男性は審判が出る直前、同委から口外禁止を条件に話し合いによる解決(調停)を促されたが拒否していました。調停の際に労使が合意して口外禁止条項が盛り込まれることはありますが、労働者が拒否したにもかかわらず、口外禁止が盛り込まれた労働審判が言い渡されるのは異例といいます。男性は2016年4月から諫早市のバス会社営業所で有期雇用の運転手として働いていましたが、会社に待遇改善などを訴える要望書を同僚とともに作成したところ、昨年3月で雇い止めになりました。男性は11月、社員としての地位確認や損害賠償など約270万円の支払いを求め労働審判を申し立てました。
●代理人によりますと、今年1月の第1回審理で、労働審判官を務める武田裁判官から「男性の言い分には理由があると思っている」と言われ、会社が解決金230万円を支払う調停を提案されました。その後、2月8日の2回目の審理で「会社は、内容が従業員に伝わるともめるので困ると考えている」として、口外禁止を調停の条件にすると伝えられました。男性は「支援してくれた元同僚に報告したい」と条件を拒否。武田裁判官から「口外禁止をそこまで重く考えないでほしい」「裁判に移行すると時間も労力もかかる」などと説得されても拒み続けました。武田裁判官は口外禁止を盛り込み、会社に230万円を支払わせる労働審判を言い渡し、確定しました。代理人の中川拓弁護士は「労働者の主張がほぼ認められる形で労働審判が出たのに、それを従業員や社会に伝えることができなければ、会社による不当な行為を抑止できなくなる」と指摘。長崎地裁は取材に「労働審判は非公開なので何も答えられない」と答えました。