安倍晋三首相は平成28年2月23日の一億総活躍国民会議で、同じ仕事なら同じ賃金を支払う「同一労働同一賃金」に向けた指針策定を指示しました。専門家による検討会を立ち上げ、具体案作りを始めました。正規雇用の賃上げに続いて非正規の待遇底上げを実現し、経済の好循環を生み出す狙いです。経団連の会長は「賛同の立場だ」としながら、長期雇用を前提にした雇用慣行への配慮を求めました。
●「正規と非正規のどのような賃金差が正当でないと認めるか早期に指針を制定していく」と、首相は国民会議で格差是正に意欲を示しました。指針では、正規と非正規といった雇用形態の違いだけで賃金に差をつけることを原則禁止するとともに、通勤手当などの支給額をそろえることなどを盛り込みます。
●安倍政権が5月にまとめる「ニッポン一億総活躍プラン」は、非正規の待遇改善が大きな柱になります。経済政策「アベノミクス」を背景にした企業収益回復の恩恵が、非正規に及んでいないとみているためです。パートタイム労働者の賃金は正社員などフルタイム労働者の6割弱です。非正規の待遇改善を働きかけ、夏の参院選で支持層を広げたい思惑も政権側にはあるとみられます。
●景気の先行きに不透明感が強まるなか、経済界の受け止めは複雑です。働く人の意欲は高めたいが、人件費の膨張は避けたいからです。「日本の場合、同じ職務でも働き方によって状況が違う。将来への期待や、転勤の可能性などの違いもあり、同じ職務なら同じ賃金だという単純な考え方は導入しないでほしい」。国民会議で日本企業の雇用慣行を踏まえるよう強調したのは経団連の会長でした。日本商工会議所の会頭も中小企業の負担増への懸念から、「指針の作成で、企業の労務対策の負担が過大にならないようにしてほしい」と指摘しています。記者団には「生産性が向上しないと、企業にとっては一方的に費用増になる」と、非正規の職業訓練を充実させる政策の強化も訴えています。
2016年02月24日 13:50