低賃金で雇用が安定せず、キャリアアップの機会が乏しいといった非正規雇用の現状を改め、働きに見合う処遇にしていくことは「1億総活躍社会」へ向けた大きな課題となるため、厚生労働省は、非正規労働者の正社員転換と待遇改善を目指し、2016年度からの5か年プランをまとめました。
●雇用者に占める非正規雇用の割合は4割に上り、若年層や家計の担い手にも広がっています。非正規対策を加速させるため、プランでは初めて数値目標を設定しました。正社員になれず、不本意ながら非正規で働く人の割合を、現在の18.1%から10%以下にする方針です。若年層は28.4%、派遣社員は41.8%と割合が高く、これらについては、半減させます。正社員との賃金格差は「縮小」を図ります。
●具体策としては、正社員転換や賃金改善を進める企業への助成の拡充、正社員を目指す人へのハローワークの支援強化、公共職業訓練の充実などを盛り込んでいます。新規の施策には乏しいですが、目標の進捗状況をチェックし、実効性を高める狙いは適切です。目標達成へ、対策を着実に進めたいところです。非正規では、経験に応じた賃金上昇が望めず、将来設計が描きにくい。経済的理由で結婚や子育てをためらう人も多く、少子化の大きな要因となっています。消費を低迷させ、景気停滞の一因でもあります。
●昨秋に施行された改正労働者派遣法では、派遣社員の雇用安定措置などを派遣会社に義務づけました。2018年度からは、有期雇用で5年を超えて働くと、無期雇用に転換できるルールの適用も始まります。非正規労働者の中には、育児や介護のため、正社員になるのをあきらめる人も多い中、労働時間や勤務地を限った「限定正社員」の普及は、こうした人の雇用安定に有効と考えられます。また長時間労働の是正など、正社員の働き方の見直しも進めます。安倍首相は、非正規労働者の処遇改善のため、雇用形態で賃金に差をつけない「同一労働同一賃金」を目指す方針を表明しており、残業や転勤の有無、責任の重さなど、正社員との違いをどう評価して「同一労働」と判断するか。今後の検討課題となっています。
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5か年の正社員転換・待遇改善実現プラン
2016年02月01日 14:17