個人情報を「匿名」加工すれば本人の同意なしで売買できるようになる改正個人情報保護法が成立しました。2003年の法制定以来、初の本格的な改正で、2年以内に施行される予定です。商品の購入履歴などを集積した「ビッグデータ」を経済活動で活用しやすくするのが狙いですが、個人を特定できないようにする加工の基準づくりが今後の課題となります。一方で、新聞、通信、放送130社で構成する日本新聞協会の編集委員会は、改正個人情報保護法成立を受け「報道など公共・公益目的の活動への配慮を明確にするよう求めてきたが、主張が受け入れられないまま成立し遺憾だ。引き続き措置を講じるよう求めていく」との談話を出しています。
●従来法は個人情報を「特定の個人を識別できるもの」と定義して無断提供を禁じていましたが、JRで起こったSUICAデータ流出のケースが抵触するのか明確ではありませんでした。改正法では、個人情報から氏名を削ったり住所や生年月日の一部を除いたりしたものを「匿名加工情報」と規定し、動向や購買状況などを本人の同意なしに第三者に提供できるよう改めました。提供側には、その項目を公表する義務が課され、違反者には懲役6月以下か罰金30万円以下の罰則が設けられました。
●個人情報の加工基準は施行までに政令や規則などで定める方針です。法改正により、新たに個人情報の使われ方などを監視する第三者機関「個人情報保護委員会」が来年1月に設けられます。加工基準をつくり、立ち入り検査や指導の権限を持ちます。これまで個人情報保護は各省庁による緩やかな監督と民間の自主規制に委ねられてきましたが、今後は独立機関による監視が主流の世界標準に近づくことになります。
●委員会は、マイナンバー制度の準備をしている「特定個人情報保護委員会」を改組する予定です。専門家らで構成する委員は7人から9人に増えますが、現在約50人の事務局の体制は未定です。多くの国の第三者機関は官民双方を監視しますが、個人情報保護委はマイナンバー制度に関わる領域を除き「官」は対象外としました。一方、扱う個人情報が5000人以下の小規模事業者はこれまで法規制の対象外でしたが、法改正で個人情報の管理を求められることになりそうです。
2015年09月04日 16:14