今年度の最低賃金の引き上げを議論してきた厚生労働省の審議会は、新型コロナウイルスの影響で中小企業の経営が厳しさを増していることを踏まえ、最低賃金を事実上、今の水準に据え置くことを決めました。据え置きはリーマンショック後の平成21年度以来です。
●最低賃金は、企業が従業員に最低限支払わなければならない賃金で、毎年、労使が参加する厚生労働省の審議会が引き上げ額の目安を示し、それをもとに都道府県ごとに決められます。審議会は、20日から詰めの議論を重ねましたが、新型コロナウイルスの影響が幅広い産業に広がる中、労働組合側が、感染の不安の中で働く労働者に報いるためにも賃上げの流れを継続するよう求めたのに対し、経営者側はウイルスの今後の影響が見通せないため、雇用の維持を最優先にして賃上げは凍結すべきだと主張し平行線をたどりました。このため、審議会は中小企業の置かれた厳しい状況や感染症の動向の不透明さ、それに雇用の維持が最優先であることを踏まえ、引き上げ額の目安を示すことは困難で、今の水準を維持することが適当だとして事実上、今の水準に据え置くとする答申をまとめました。据え置きはリーマンショック後の平成21年度以来です。最低賃金は、昨年度まで4年連続でおよそ3%の大幅な引き上げが行われていましたが、これによって今後、各地の労働局は都道府県ごとの最低賃金について引き上げを見送る見通しが高くなりました。
●審議会の終了後、労働組合側の委員として参加した連合の冨田珠代総合局長は会見を開き、「わずかでも引き上げて賃上げの流れを継続すべく、歩み寄りの姿勢を見せて最後までこだわったにもかかわらず、このような結果となり遺憾と言わざるをえない」と述べました。そのうえで、「これから始まる地方での議論に向けて、最低賃金の地域間格差の縮小も考えるよう答申に盛り込まれたので、引き上げに向けて地域の自主性を発揮してほしい」と話していました。今年度の最低賃金の引き上げを議論してきた厚生労働省の審議会が最低賃金を事実上、今の水準に据え置くことを決めたことについて、日本商工会議所の三村会頭は「新型コロナウイルスの影響により、未曽有の苦境にある中小企業・小規模事業者の実態を反映した適切な結論であり、これを評価する。今年度の結論は、当面は官民を挙げて『雇用の維持』と『事業の継続』を最優先に図っていくという明確なメッセージであると受け止めている。今後行われる地方審議会においても中小企業や地域経済の窮状をしっかりと考慮した検討が行われることを心から期待する」とするコメントを出しました。
2020年07月27日 09:19