トヨタ自動車の男性社員(当時28)が休職から職場復帰した後の2017年に自殺したのは、上司のパワーハラスメント(パワハラ)が原因だったとして、豊田労働基準監督署(愛知県豊田市)が9月11日付で労災認定していたことがわかりました。遺族側は同社に損害賠償を求める方針といいます。遺族側代理人の立野嘉英(たちのよしひで)弁護士によりますと、職場復帰後に通院しなかったり、自己申告しなかったりすると「治った」と判断され、休職前のハラスメント行為と復帰後の症状や自殺との因果関係が否定されることが多いといいます。「今回の認定は実態を踏まえた適正な労災認定で、意義が大きい」としています。
●立野弁護士によりますと、男性は東京大大学院を修了して、2015年4月に入社。1年間の研修期間を経て、2016年3月に同市の本社に配属されました。上司から翌月以降、繰り返し「バカ、アホ」「こんな説明ができないなら死んだ方がいい」などと言われたほか、個室に呼び出されて「録音してないだろうな。携帯電話を出せ」などと詰め寄られたこともあったといいます。男性は2016年6月ごろ精神疾患を発症し、同7月から3カ月間休職。復帰後は別のグループの所属になったものの、同じフロアにこの上司の席があったといいます。男性は翌年7月、「死んで楽になりたい」「もう精神あかんわ」などと周囲に漏らすようになり、同10月、社員寮の自室で自殺しました。
●遺族は立野弁護士を通じ「息子はたくさんの希望をもってトヨタに入社した。それが上司からの苛烈(かれつ)な暴言で歯車が狂い、帰らぬ人になりました」「(会社の)パワハラを放置するような対応がさらに息子を苦しめたのではないか。今回の認定を契機に、パワハラ被害が生じないよう、職場環境の改善に努めていただくことを切に希望します」とコメントしました。トヨタ自動車広報は、元従業員が労災認定されたことは事実と認めた上で「労働基準監督署の決定を真摯(しんし)に受け止め、労働災害の防止と社員の健康管理に努めていきたい」とのコメントを出しました。
●トヨタの調査や男性の手帳などから判明したパワハラ行為
・日常的に「バカ、アホ」と言われる
・「なめてんのか、やる気ないの」「こんな説明ができないなら死んだ方がいい」などと叱責(しっせき)される
・(地方大学を卒業後、東京大大学院を修了した男性について)「学歴ロンダリングだからこんなこともわからないんや」と言う
・個室に呼び出されて「俺の発言を録音していないだろうな。携帯電話を出せ」などと詰め寄られる
2019年11月21日 09:53