大阪府と奈良県で主に小中学生向けの進学塾「類(るい)塾」を経営する類設計室が、講師の大半を取締役に就かせ、残業代を支払わないとして、元講師らから相次いで訴訟を起こされていたことがわかりました。既に裁判所が残業代の支払いを命じたケースも出ています。講師側の代理人を務めた渡辺輝人弁護士は「長時間労働を強いるために、実態のない取締役に就かせている」と批判しています。
●同社は1972年創業で、教育施設などの設計、学習塾の運営が主な事業です。北野、天王寺などの大阪府立の難関高への合格実績を誇る「類塾」は65教室あり、現在の生徒数を公表していませんが、2013年には約2万人の生徒がいました。同社の法人登記によりますと今月現在、「取締役」が400人以上います。取材に対し、同社の担当者は「社員は取締役になり、誰もが会社運営に関与する」「労働時間も各自の裁量に任せていた」とし、残業代は支払ってこなかったといいます。しかし2009年以降、数十人の元講師が残業代を請求。「大半は支払って解決した」としていますが、現在、大阪地裁で6件が係争中といいます。
●京都地裁は2015年7月、元講師が残業代を求めた訴訟で、ほぼ請求通り約1200万円の支払いを同社に命じました。同社が社員の出退勤を厳格に管理していることなどから、元講師を「労働基準法上の労働者」と認め、時間外手当の支払いを求めたもので、最高裁で確定しました。同社によりますと、昨年5月に取締役に残業代分を追加報酬として支払う仕組みを導入。さらに講師らに取締役を続けるか確認し、外れた人もいるといいます。労働実態と異なる会社内の地位をめぐっては、ハンバーガーチェーンなどで、会社側が社員に残業代を支払わずに長時間勤務させるため、労基法上の「管理監督者」として扱う「名ばかり管理職」問題が表面化しました。この場合、実際に管理監督者かどうかは、①経営者と一体的な立場にある②自分の働く時間に裁量権がある③他の労働者に比べて給与が高い、などの基準で判断されることになります。
2017年07月10日 09:09