東証1部上場の工作機械メーカー「ソディック」(本社・横浜市)の社員、大泉共生(ともお)さん(当時43歳)が2017年に自殺したのは、長時間労働でうつ病を発症したためだとして、松本労働基準監督署(長野県松本市)が労災認定していたことが、関係者への取材で判明しました。直前の時間外労働は月123時間。5日前には、実際にはやっていない不正を上司に詰問されており、自殺の引き金になった可能性を指摘する意見が添えられました。
●遺族側代理人の岩城穣弁護士らによりますと、大泉さんは松本営業所で機械修理やメンテナンスを担当。2016年5月、同僚の異動で通常2人で担当する業務を1人でやるようになり、長時間の残業が常態化しました。2017年4月21日の社内会議で、大泉さんは取引先への訪問記録を捏造し、残業代を不正請求しているなどと疑われ、上司から繰り返し詰問されました。別の社員が携帯電話の位置情報などを確認して疑いは晴れましたが、上司から謝罪はありませんでした。4月26日、大泉さんは長女愛菜(えな)さん(当時7歳)とともに失踪。5月7日、山形県小国町の林道に止めた乗用車の中で遺体で見つかりました。車内に練炭の燃えかすがあり、26日夕に無理心中を図ったとみられます。
●松本労基署は、大泉さんが2017年4月上旬にうつ病を発症したと認定。過去半年間で残業が80時間を超える月が4回あり、直前1カ月は123時間でした。同署は、通常2人でやっていた業務を1人で担当したことが強い心理的負荷を与えたと指摘。上司に詰問された会議については、うつ病発症後の出来事だとして判断しませんでしたが、「自殺の誘因の一つとなった可能性が高い」とする専門部会の意見が添えられました。2021年7月、同社が遺族に解決金を支払うことで和解が成立。ただ、同社は労災認定を公表せず、遺族への直接の謝罪もしていないといいます。同社は取材により、「ご遺族の皆様には心よりおわびとお悔やみを申し上げます。再発防止対策を検討・実施します」とのコメントを出しました。
2021年11月22日 09:34